モンハンブログ 週末の笛吹き

主にMH3GとMH4、MH4Gそしてモンスターハンタークロスのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。

モンハン小説未来編 第7話 「ウルズとフレイア、ハチミツ採取に行く」 その5 

その5で終わらせると言ったな。
あれはウソだ。

うん。
“また”なんだ、すまない。

書いていたら、なぜだか長くなっていく。
ちなみに、紅兜との死闘は、一単元で書ききるつもりだったのが、一回分まるまる使ってしまうという。
そもそも、掌編として気楽に書き始めたはずなのに。

既にウルズが装備を作ったときよりも長く……。

とにもかくにも。
なんとか狩猟を終えて下山。
クエスト自体はなんとか終了させることが出来ました。

戦利品のハチミツを味わう、未来編第7話その5。
お楽しみいただければと思います。


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14.天界の滋味

 ハっと眼を覚ますと、布団の中だった。
 自分の感覚としては、数十秒程度、瞳を閉じていた感じなのだが。
 布団に寝かされているということは、それなりに時間が経っているのだろう。

 窓から入る日差しは赤く昏く。すでに日没寸前であることを示していた。

「あ! 眼を覚ましたぞ、フレイア君」

 ミミル師が、ベッドの脇に置かれた椅子に座って私の様子を見ていたようだ。

 部屋の中を見渡した。
 
 木造の、あまり大きくはないがシンプルで綺麗な部屋で、ベッドは私が寝ているものも含めて二つ。
 ベッドサイドテーブルもあり、その上にはハチミツが少しだけ詰められた瓶が載っていた。
 クエストの途中で採取した黒っぽいハチミツではなく、綺麗な黄金色をしている。
 
 ここは、おそらくは麓近くにある村の宿泊施設だろう、と私は思った。二人部屋のようだが、私を含めて四人が詰めているため、少し窮屈に見える。

 ミミル師の言葉に、フレイアとクヴァシル先生もこちらに来て、私を覗き込んだ。

「よかった……。心配したのよ! ウルズったら突然倒れるんだもん」
「お医者さまの診断では、疲労が限界を超えていたとのことでした。ああ、そのまま寝ていて下さい。とにかく疲労回復が最優先です」
 フレイアは安心したように、私の手を取った。
 クヴァシル先生も優しく言葉をかけてくれた。
 
 意識はハッキリとしているのだが、上体を起こそうとして身体に力が入らないのがわかった。ここはお言葉に甘えることにする。

「すみません。迷惑を……」
「仕方ないわ。あのバケモノを相手に、二日間も粘って足止めしてたんだもの。今回は負担をかけすぎた。こっちが謝らなきゃ」
 フレイアが私の手を握ったまま頭を下げた。
「我々からも礼を言う。まさか本当に居るとは……しかも、あれ程の相手だったとは想定外だった」
「ハチミツのために命をかけるのは私達の常ですが、今回は成果を急ぎすぎたと反省しています。本来は二人で下見に行く程度の予定だったのですが、あなた達が思っていた以上に優秀で、つい頼って……頼りすぎてしまいました」
 お二人も、申し訳無さそうに言った。

 私も、今回は張り切りすぎた。
 憧れでもあるハニーハンターズのお二人に良いところを見せたいという想いが強かったのだ。
 生還できたから良かったものの、どんな相手であっても退くべき時は退くよう提案し実行出来なければ、いつか本当に命を落とすかもしれない。それを学ぶという意味では良い経験にはなった。恐らく、フレイアも同じようなことを考えているのではないだろうか。

「クヴァシル君。あれを」
「了解です、ミミルさん」
 不意に、お二人が動いた。
 ミミル師の指示で、クヴァシル先生がテーブルの上の、蜜を詰めかけの瓶を手にする。
 ミミル師はミミル師で、自分のポーチの中から細長いケースを取り出した。
 小さいが頑丈そうなそのケースを開ける。中には黄金色に輝くスプーンが入っていた。
「これを舐めるといい。我々もまだ味見をしていないが、ほぼ純粋なメガミノフトモモの蜜だ。純金のスプーンも貸そう。金属の味がしないので、純粋に蜜の味を楽しめる」
「ハチミツはもともと栄養価の高い食物。中でもメガミノフトモモの蜜ともなれば、疲労回復効果は抜群のものがあるでしょう」
 私は身体を起こそうとしたが、フレイアに止められた。
 そしてフレイアが瓶とスプーンを受け取り、黄金色のハチミツをすくうと、言った。
「はい、アーンしなさい」
「……いや、子供じゃないんだけど……」
 抗議するが、しかしフレイアの眼は真剣だった。私がいきなり倒れたのは、彼女にとっても少なからぬショックだったのかもしれない。
 仕方がない。
 私は、やれやれ、という表情をしながら、言われるがままに口をあけた。
 ハチミツをすくったスプーンが、静かに口内に入れられる。
 
 次の瞬間。

 私は本当に気絶するかと思うほどの衝撃を味わった。
 全身から力が抜ける。
 
「……これは……これは……ヤバい……し……死ぬかも……」
「な……? 何!? 何か変な味が!? 駄目だと思ったらペっしなさい、ペっ!」
「……そんなこと……できない……」
「の……飲み込んじゃったの……!?」
「……美味い……美味すぎる……死ぬほど美味い……」

 慌てていたフレイアが、今度は呆れたような顔をして私を睨んだ。
「……ちょっと。紛らわしい言い方しないでよ」 
 フレイアの抗議に、しかし私は反応を返さなかった。口の中に残るメガミノフトモモの蜜を、舌の上で転がすようにして味わう。

 これは。

 天国の滋味だ。
 下界の食べ物じゃない……。

 うっとりとした……いや、もはや忘我と言ってもいい表情を浮かべていたであろう私を見て、フレイアは首を傾げた。

「そんなに美味しいの? どれ……」
 フレイアも、私の様子を見て興味を持ったようだ。蜜の滴る黄金のスプーンを口に入れた。
「……あら……凄いこれ。本当に美味しい……ものすごい美味しい。さすが、わざわざ古文書に記されただけあるのかも……」
 フレイアがびっくりした表情を浮かべる。
「ま……まてフレイア君。私も……」
「……自分も……」
 辛抱たまらなくなったのか、ミミル師がフレイアからひったくるように瓶とスプーンを受け取った。
 一口舐めると、彼女はフラフラと後ずさりながら、まるで足の力が抜けたかのように椅子に腰を落とした。
 うつむきながら、腕だけを動かして瓶をクヴァシル先生に渡す。
 
 彼女の足元に、ポタリ、ポタリと雫が落ちた。

「ちょ……ミミルさん……そんな、泣くほどの……」
 フレイアが驚愕しながら話しだした時。
「……おお……おおおおぉぉぉ……」
 最後にハチミツを口にしたクヴァシルが唸った。
「いや、何!? 今度はなんなんですクヴァシルさん!?」
「……凄い……こんな……こんなハチミツが存在するなんて……」
「…………」
 フレイアは、ついに無言になった。
「……人生観の変わる味です……」
「……いや、確かに美味しかったけど……。なんなのよ……あなた達の甘みに対する感受性は……なんなのよ……」
 フレイアは、右手で眼を塞ぐように顔を覆って、首を振った。

 そうは言うがフレイア。
 これを味わって「すごく美味しい」としか言えない方が、私はどうかしていると思うんだ。少なくとも、ここで少数派なのはフレイアの方なのだよ。

 私は内心でそう思った。

 そんな私の思いを知ってか知らずか。
 フレイアはクヴァシル先生から瓶を奪い返して、再び私に「アーン」させた。
「とにかく、栄養価は高いみたいだから、いっぱい食べて寝なさい」
 フレイアはそう言って、二口、三口と私にハチミツを食べさせてくれた。

 味の洪水で、溺れ死ぬかもしれない。
 そう思いながら、私の精神は再び闇の中へと堕ちていった。



15.紅兜

 私の回復を待つため、数日間、その宿に宿泊した。
 フレイアと私の二人部屋で、お二人は離れにある別の部屋を借りていた。
 起き上がろうとしても許されず、私はほとんどベッドの上で過ごし、その間にフレイアが狩猟報告書やマップと植生図を作成していた。
 お二人はお二人で、巣の解体とハチミツの採取をじっくりと行っていたようだ。

 宿には、露天の大浴槽があった。街から離れている場所だけに、なかなか珍しい。
 温泉ではなく、湧き水を沸かしているとのことだったが、身体に力が戻って歩けるようになった私もしばしば入浴に行った。

 大きな風呂は大変気持ちよかった。
 温かいお湯を無尽蔵に使うことが出来るという心地よさ、満足度の高さは、他ではなかなか味わえない。
  
 フレイアとミミル師、そして私の三人で入ったこともある。
 まあ、その辺りの出来事は、詳しい描写を求められるほどの需要はないだろうから省く事にするが。

 ただ、ミミル師の肌は美しかった。

 三人で並んで大浴槽につかっていた時、フレイアがそれを褒めると、ミミル師は笑いながら言った。
 ハチミツは「食べる美容液」である。
 肌の保湿、肌荒れの予防など、特に肌に対しては効果が高い。ハニーハンターズの面々は、皆、その効用を享受しているよ。
 具体的な効果はハニーカンパニーで出している書籍『ハチミツ美容 その効果と実践』に詳しく載っているから、ぜひとも読んでみてくれ。
 まぁ二人はまだ若いから、肌のケアをする必要もないだろうが、なに、歳を取ったらその重要性がわかるよ。ハハハハハ……ハハハ……ハハ……↓。

 私も一つ聞いた。
 そういえば、四人部屋じゃなくてもよかったんですか? そっちの方が安くあがると思ったのですが。

 それに対しては、こう答えてくれた。
 
 男性のクヴァシルが同室では、フレイア君もウルズ君も落ち着かないだろう。特にウルズ君は心身ともにじっくり休まなければいけないのだし……それに、君はクヴァシルに対して……というよりも、男性そのものに対して、少し壁があったようにも見えた。気が休まらないのでは、この休息期間に意味がなくなる。

 まあ、それ以上に。
 我々は誰にも邪魔されずに、あの蜜の採取と、採取資料の整理をしたかったのだよ。
 あのハチミツと集中して向き合いたかった。
 夜には夜で……。
 ……うん、二人だけで、あの天界の滋味のようなハチミツを得たことを、悦びあいたいとも思ったのでね。

 なるほど。と、私は思った。
 
 私の隣では、フレイアが少し目をそらして、顔を赤らめていた。
 
 ……意外とウブだよな、この人……。

 ……
 …………

 そんなこんなで日は経って。

 私が復調し、グァーガ車に揺られながら、定宿にしている街の集会所に帰る事になった。
 メガミノフトモモ以外にも採取したハチミツも多く、持ち帰る荷物の量はそれなりに多かった。お二人は、よくこれを担いで下山できたものだ。ハチミツへの執着が為した業だったのだろう。

 メガミノフトモモの蜜に関しては、瓶に詰めずに巣のまま持ち帰るものもあるようだった。

 これらはもはやお二人の私有物ではなく、ハニーハンターズ、ひいてはハニーカンパニーのものであり、研究部に回すために未処理の巣も必要なのだ、と、ミミル師は言っていた。

 さすがだ……と、私は思った。

 集会所に帰り、フレイアが作成していた報告書を事務所に提出する。
 美しいが感情をあまり外に出さない、生きている人形のような受付嬢に確認してもらって、この狩猟もついに終りを迎えた。

 と、思ったのだが。

 受付嬢は、珍しく表情を曇らせて、私達に言った。
「アカアシラと記載されている巨大アオアシラの件で、もしかしたらギルド本部から聴取を受けるかもしれませんので、そのつもりで居てください」
「……え? 聴取……? 私達、何か違法なことでもした……?」
 フレイアが訝しげに聞き返す。
「いいえ、そうではなく。……この特殊個体……私の想像が確かならば、極まれに報告のある“二つ名持ち”である可能性が高いのです」
「二つ名?」
「ええ。過去に“紅兜”と呼ばれたアオアシラ特殊個体が、巨大な被害をもたらした例があるはずで……私も古い資料と照らし合わせなければ確かなことは言えませんが……しかし外見的特徴が、その紅兜と類似しているのです」
「なるほど。モンスターのデータ採取として、実際にやりあった私達の話が聞きたい、と」
「その通りです。この報告書は高重要度報告として上にあげなければいけません。すぐにでも王立書士隊か、ギルドの生態研究部、あるいは古龍研究所から人が来るでしょう。その時には呼び出すことになると思います」
「わかったわ。私達ギルドに所属するハンターの義務だから、異存はありません」
「ありがとうございます。それにしても……」
 受付嬢は、またいつもの無表情になって言葉を続けた。
「これまでも立ち入り制限区だったフニット山でしたが、これで完全に立ち入り禁止区域になるでしょう。報告書を見る限り、特殊なハチミツが採取できたとの事ですが、それは今後あきらめてもらうしかありませんね」
 これを聞いて、ミミル師が神妙に頷いた。
「……まあそれは仕方がないだろうな」
 私も意外だったが、この反応にフレイアが少し驚きの声を上げる。
「ミミルさん……ずいぶん素直ですね? ハチミツの事なのに……」
「いや……致し方ないだろう。確かに血を吐くほど悔しいが、ギルドの決定には“簡単には”逆らえん」
「血を吐くほど……ですか……」
「今回、それなりの量の採取が出来ました。とりあえずはそれで良しとしなければいけないでしょうね」
 そう言って。
 ミミル師とクヴァシル先生は、大きくため息をついたのだった。

 こうして。
 私達のハチミツ採取クエストは終わった。
 
 あとは。
 クエストとは関係のない。

 “私の仕事”が残るのみだ……。



16.交渉

 クエスト終了の打ち上げとして、私たちはアイルー屋台の並ぶ集会所の屋外フードコートに来ていた。
 思い思いの食事を頼み、談笑しながらの会食になった。
 ロキと、他のパーティのオトモ業務から戻っていたローゲも混じっている。

 食後の会話の中で、ミミル師が話し出した。

「いや、今回は本当に世話になったよ。ギルドからの報酬はハニーカンパニーの収支決済に付けなければならないので折半してもらうしかないが、個人的に報酬を支払いたい。いや、遠慮はしないでくれ。これは純粋に私の感謝の気持ちだ」
 
 どう話を切り出そうか迷っていた私は、渡りに船とばかりにその話に乗ることにした。
 ちらりとフレイアを見る。
 私の「決意した眼」を見て、フレイアは少し驚いたような顔をしたが、お二人にわからないように小さく頷いた。
 これでフレイアの意思は確認できた。
 よくわからないけど任せる、だ。

 この交渉。
 全権を私が受け持つ。“私の仕事”だ。
 
 私は笑顔を心がけながら、精神をナイフのように研ぎすませ、言った。
「ミミルさん。では遠慮なく……」
「うむ」

「あのハチミツを少しください」

 秋晴れの空が、雲でわずかに翳った。夏の陽光とは違い、それだけで光が熱を失う。
 少し強くなった風の音が、数瞬の間、あたりを支配した。

「……まて。それは……」
 絞り出すような声で断ろうとするミミル師。
 だが私はさらに切り込む。
「遠慮はしないでくれ、とおっしゃいました。純粋に感謝の気持ちだ、とも」
「それはそうだが……私は報酬金額の話として……」
「私は、お金よりもあのハチミツが欲しいです。お金には代えられない価値があると思うので」

 今までしたことのない「交渉」。
 私は更に気を引き締めた。

 とにかく、引かないことだ、妥協しないことだ。
 そう自分に言い聞かせる。これを逃したら、あのハチミツを手に入れる機会はもう二度と巡ってこないのだ。

「……」
 ミミル師にとって、おそらくは不意打ちとなったはずだ。精神的には私が有利。
「……あのハチミツは、今、瓶で12本ある」
 だが、ミミル師の眼は、ハニーハンターズとしての冷徹さを取り戻した。
「……三本だ。それ以上は応じられない」
「団ty……ミミルさん!?」
 クヴァシル先生が、驚きの声を上げる。おそらくは絶対に応じないと考えていたのだろう。私もそう思っていた。
 それにしても、三本か……。
「確かに今回の採取クエストでは、君たちには世話になった。危険にも晒してしまった。だが、あの古文書を発見し、解読し、立ち入り制限地区でのクエスト許可を取り、更に君たちを誘ったのは、我々ハニーカンパニーだ」
 声は鋭く。目つきは更に鋭く。ミミル師は続ける。
「本数の内訳は、アカアシラ……いや紅兜遭遇時の二人による護衛の報酬として一本。紅兜を陽動したウルズ君の働きに一本。そして我々を先に逃し紅兜を撃退したことに対して一本」
 ミミル師が私の眼を真っ直ぐに見据えた。

「これ以上を求めるとは、よもや言うまいな?」

 合計三本。
 ミミル師は本気だろう。

 正直、一本貰えれば勝ちだと思っていたが。
 しかし。

 私は意を決して、言葉を返した。

「四本です」

 フレイアが息を呑むのがわかった。
 ミミル師は冷静な顔のまま、私を睨んだ。
「……もう一本を要求する、その理由を問おう……?」

 ミミル師は、もはや私の知るミミル師ではなかった。

 ハニーハンターとして。
 そしてハニーカンパニーの……おそらくは重鎮として。

 ハチミツに。

 ハチミツに命を、人生をかけてきた者の顔になっていた。

 私は言った。
「お二人は、あの山に危険なモンスターが居る可能性を知った上で隠していました。予知できた危険を知らせなかった、不手際の謝罪として最後の一本を求めます」
「根拠は?」
「私が、宿で最初に目を覚ました時、ミミルさんは言いました。“本当に居たのか”と。そして“あれほどの相手だとは予想外だった”と。古文書にあったのでしょう? いや、書かれていなかったはずがない。巨大な力を持ったモンスターの存在が」
「……」
「そもそも、あの古文書はハチミツの所在を記したものだったのですか?」
「……」
「普通に考えて、ハチミツの所在をわざわざ古文書に残すとは考えにくいのです。あれは、ハチミツのための古文書ではない。強大なモンスター“紅兜”への注意を喚起するためのものではなかったのですか? ハチミツのことには、多分ついでで言及されていただけの……」
 私に言葉を継がせず、ミミル師は手を前に出すことで遮った。
「クヴァシル」
「はい」
「メガミノフトモモのハチミツを出せ。四本だ」
「よろしいので……?」
「正当な報酬だろう」
 ミミル師の顔が、私の知っているそれに戻る。
 彼女は、ニヤリと笑って言った。
「よくわかったなウルズ君。あの古文書は、ハチミツの所在を記したものではない。あの古文書の要旨はこうだ。“フニット山には美味いハチミツはあるが、強大なモンスターがいる。古来よりそれを求めて入る者が絶えないが、それはバカがやることである。決して近づくな“だ。確かに私たちはそれを隠して、君たちに協力を仰いだのだよ。いや、それにしても一本取られた……文字通りな。口は災いのもと。迂闊なつぶやきはしないことだな」

 クヴァシル先生がカバンから取り出した四本のハチミツの瓶を、ミミル師が受け取る。

「なかなかやる。そのクソ度胸は大したものだ。それより何より、ハチミツに対するその強烈な欲求。ウルズ君。気に入った。我々の傘下に欲しいくらいだが、どうだ?」
 瓶をこちらに引き渡す時、ミミル師がそう耳元で囁いた。
 それを聞いていたフレイアがギョっとした顔をして、間髪入れずに私を抱き寄せた。
 それを見たミミル師は、冗談だよ、冗談。と、眼以外の部位で笑った。

「あの……」
「なんだねウルズ君」
「もう一つだけ、お願いが……」
「……ハチミツはもうやらんぞ」
「そうではなく……」
 警戒心を表情に出したお二人に、私は言った。
 これは本当に、純粋にお願いなのだ。
 
 それも、お二人にとってはさほど難しいことではない。

 しかし自分の性格として、これをお願いするのにはそれなりの決心が要る……。特に、親しいフレイアやロキの目の前では。

 緊張のあまり目をつぶり、私は意を決して言った。

「あの……サイン……サインを下さい……」
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category: モンハン小説

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