モンハンブログ 週末の笛吹き

主にMH3GとMH4、MH4Gそしてモンスターハンタークロスのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。

モンハン小説『週末の笛吹き』 第六話 その3 怒れるアイルーと密猟者  

先月の中旬にはお送りしたいと思っていた、モンハン小説第6話の3。
リアルが忙しかったため、書く時間と気力が捻出できず、遅れに遅れてしまいました。

それでも、なんとか書き上がりました。
モンハン小説全体でも、もっとも書きたかったシーンの一つ。
色々と決着が付きます。

書いていて痛恨と思ったのは。
この話に入る前に、外伝的でもいいから、テュールの日常生活の話を入れておくべきだったということ。
自分の中では、ある程度完成したテュール像があるけれど、読者さんから見たら、今までぜんぜん喋りも独白もしなかったテュールがいきなり主役になってしまっているわけで……もう少し、思い入れを持ってもらえるような流れを作っておくべきだったかなぁと。

テュールの日常生活に絡んでくるとなると、人間からは村長とユヅキ。仲間のアイルーからはロキ(とロリフレイア)、ソグン、そしてカーラ。今になってそう考えると、色々と書けたのかも。

こう言うことは、何か次回作があったら活かしていこうと思います。ホント、未熟です。

などという、書き手の事情はともかく。

ついにフェンリルと対決するテュールの話。
楽しんでいただければと思います。


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01.フェンリル

 虫の音がやんだ。
 ごく小さな変化だが、密猟者であるフェンリルはそれを聞き逃さない。
 チっと小さく舌打ちをして、彼は移動の準備を始めた。

 ハンターとして、リスクを背負ってモンスターと正面からやりあうことが性に合わず、儲け話に乗って始めた密猟。
 卵を持ってきて売りさばくだけで、大型モンスターを狩る以上の金を得ることが出来た。
 まともな狩猟は馬鹿らしくなってしなくなり、やがて底辺のハンターを囮にすることを憶え。
 密猟がバレてギルドからはハンターとしての登録を抹消された。
 困りはしなかった。
 もとよりギルドなど眼中にはない。手軽に金を稼ぐことができれば、それでいいのである。
 
 ただし、密猟には狩猟とは別の危険が伴う。
 お尋ね者となり、ギルドの手先である村付きハンターやその配下のアイルーたちの追跡を受けることもある。

 フェンリルが長く活動を続けられているのは、些細なことであっても対応して身を隠す、その用心深さがあったからだ。
 
 それにしても、と、フェンリルは思った。
 もともと、このガルガリ大森林はギルドの管理が行き届かず、密猟者にとって活動しやすい森だった。
 少なくない数の密猟者が入り込み、秘密裏に薬効のあるキノコを採取して売りさばいたり、あるいはギルドの治安部隊に目を付けられた時に逃げ込んだりしていたのだ。
 大した獲物があるわけではないのでフェンリルは来たことがなかったが、それでも密猟者たちの地下組織で共有されている森の地図くらいは頭に入っていた。

 しかし数年前に、大森林の北にあるガルガリの滝の村に村付きハンターが入り、以前ほど安全ではなくなった。
 さっき鳴り響いていた、あきらかに連絡の意図を持った連続した爆発音も、おそらくはリオレイア発見の報だろうが、気になる。
 ギルドの連中ですら手に入れていないような地図があるからこそまだしも安心できるが、少し北に近づきすぎたかもしれない。

 先日。
 非合法の卵密売組織の依頼と情報を得て、南の平原でリオス種の金色の卵を盗み出した。
 リオス種の卵の密猟は、親竜の縄張りさえ脱してしまえばあとは安全である。それはフェンリルにとって慣れた作業だった。
 それだけで、通常の10倍もの報酬を約束された、美味しい仕事だと思った。

 しかし、今回は違った。

「なんだってんだ、あの黒いリオレイアは……?」
 フェンリルはライトボウガンを背負い、抱き紐でくくった金の卵を持って歩き始めた。
「これの親は別のリオレイアだったはずだ。なぜ卵を追ってくる。おかげで、こんな森に逃げ込む羽目になったんだ」
 精悍な顔を、身勝手な怒りで歪ませながらフェンリルは独り言をつぶやく。
「あのレイアが特別なのか……それとも……」
 それとも、この卵が。
 今思えば、あの報酬の高さは異常だ。ただ殻が金色であるというだけではないのかもしれない。
 
 追われたせいで目立ってしまったし、何よりもあのレイアがガルガリ河下流の村々に被害を出したおかげで、今度ばかりはギルドも本気で追ってくるかもしれない。
 全く、貧乏くじを引いた。
 この森でレイアを撒いて、早く卵密売組織の根拠地に行かなければ。
 新たに身を休められそうな地形を探し、フェンリルは歩を早めた。



02.対決

 カーラを置いて、テュールは草藪から抜け出した。
 気配を消す身のこなし。しかし、その身から発する殺気は隠しようもない。
 フェンリルには早々にその存在を感じ取られてしまった。

 振り向いたフェンリルと目が合う。
 その瞬間、フェンリルは手早く抱き紐を外し、そっと卵を地面に置いた。
 追跡者としてのアイルーは厄介であるが、ハンターほどの戦闘力を持つものはほとんど居ない。
 ならば下手に逃げるよりも、討伐してしまったほうが早いとフェンリルは算段したのである。

 テュールもフェンリルの動きに気付き、気配を隠すことを諦めて走り始めた。
 暗闇の中、敵対する二つの影の距離が一気に縮まる。
 
 フェンリルが愛用しているショットボウガンに装填されているのは散弾。夜目が効くフェンリルだが、それでもこの夜の闇の中、的が小さくすばしこいアイルーを相手に通常の弾では不利だが、しかし散弾ならば話は違ってくる。

 彼は散弾がもっとも威力を発揮する距離までテュールを引きつけて、間合いに入ったと見るや一気に速射した。

 怒りに駆られ、まっしぐらに駆けてきていたテュールは止まることが出来ず、半身になって左手で顔や目をかばう。
 放たれた散弾は、致命傷を与えるには至らないが、テュールの毛皮を切り裂き血しぶきを飛ばした。

 フェンリルはこれで追手のアイルーは怯み、動きを止めると考えていた。
 そうなれば後は、バックダッシュをしながら距離を取り、じわじわと蜂の巣にするだけだ。

 だが、テュールはまるで痛みなど全く感じていないかのように、その勢いを止めずに駆け込んできた。
 血に染まった左手で、剣鉈に取り付けられている紐を解き、先端に付けられた分銅を振り回し始める。
 驚いたフェンリルは、再度攻撃をする。しかし距離が近すぎるために散弾は十分に広がること無く、一部の弾がテュールの左手に食い込んだだけで終わった。
 テュールは怒りにも痛みにも影響を受けず、何万回も練習した分銅術の動きを的確に行った。
 左手で投げられた紐付きの分銅は、血を纏いながらきれいな放物線を描き、後ろを向いて逃げ出したフェンリルの脚に絡みつく。
 前のめりに倒れたフェンリルは、それでも身をひねって仰向けになり、銃口を迫り来るアイルーへと向けた。
 しかし、テュールはすでにその射程のさらに内側へと入り込んでいる。
 
 フェンリルが苦し紛れに引き金を引くのと、剣鉈をテュールが一閃させるのとは同時だった。

 散弾の発射音が夜の森に響く。
 
 だが、テュールの剣鉈で銃身を横から払われたショットボウガンの攻撃は虚空を切り裂き、背後に生えた木々の葉を薙ぎ払うだけの結果に終わった。

 テュールはフェンリルの腹に膝を押し付け、フェンリルは痛みに顔を歪めながらもあがき。
 一度は軽量のテュールを押しのけたが、脚に絡まった紐によって逃げ出すことが出来ずに再び転倒する。
 立ち上がろうとしたところを、背後からテュールに紐をかけられ、暴れるたびにそれが複雑に絡まり。
 ついにはその動きを封じられた。
 それでも逃れようと、まだ完全に動かなくはなっていない左手で紐を引きちぎろうとしたが、再びフェンリルの上になったテュールが首筋に剣鉈をあてがった。

 短くも激しい攻防の末、森の中に寸刻の静けさが訪れた。



03.怒り

「ま……まて……!」
 首にまで紐が巻き付いたフェンリルが、苦しげに声を上げた。
 テュールの身体の下で拘束され、その気になればすぐにでもその喉を切り裂くことが出来る状態で、その勝敗は完全に決していた。
 テュールもまた左半身を中心に散弾の速射を受け血に染まっていたが致命傷ではない。
 痛みとともに、やや冷静な心が蘇ってきた。
「お前は何のために俺を襲う……?」
 フェンリルは、声に卑屈なものを滲ませてテュールに問いかける。
「ギルドのためか? 飼い主のためか? そいつらがお前に何を与えた? そんな怪我をしてまで忠義立てをする程の……グッ、ガッ!」
 無言、無表情のまま、テュールは首に巻き付いた紐を締め、命乞いを始めたフェンリルを黙らせる。

 このまま殺してしまいたい。
 その後、あのギルドナイトを名乗る銀髪の女に殺されてもいい。
 いや、むしろその方が……ヒュミルの敵を討って、そのまま死ねるならば……むしろ本望ではないのか?
 そんな思いがよぎる。

 苦しそうに喘ぐフェンリルの上で、テュールはそんな事を考えていた。

 ふと気がつくと、フェンリルが半分失神していた。
 テュールは特に慌てることもなく、ただこのまま殺してしまってはもったいないと思いながら、紐を緩めた。
 求めていた酸素が一気に流れ込み、フェンリルは嘔吐寸前まで咳き込む。その咳き込む動作で紐が締まり、そのせいでまたえづく。
 涙と鼻水を流しながら、時間をかけてやっと落ち着いたフェンリルは、苦し紛れに叫んだ。
「なぜ、お前は俺をここまで苦しめる!」
 その言葉は、テュールには届かない。

 テュールは、フェンリルを殺してはいけない理由を一つづつ数えては捨てていく作業の最中だった。

 なぜ私は、こいつをまだ殺していないのだろう。
 こいつを殺せば、自分も殺されるからか? いや、違う。別に死んでもいい。
 こいつを殺しても、ヒュミルは戻って来ないから? 別に生かしておいても同じじゃないか。
 こいつを殺して、私が失うものって、なんだろう……?

 何を言っても無反応のテュールに、フェンリルは恐怖を募らせる。
「な……なんなんだお前は……」
 フェンリルが叫ぶ。

「オレがお前に何をしたって言うんだ!」
 
 ピクリと、テュールの耳が動いた。

 何をした……か……。

 外から見れば表情を失ったまま、テュールの内なる精神はうねりを伴って動き始める。

 こいつは憶えていないのだろう。
 当たり前だ。
 使い捨てにするための幼いハンターを脅す方便に使った、病気で死にかけていたアイルーのことなど。
 憶えているはずもない。

 ただ、ひとつだけわかった。

 殺さない理由を数えても意味なんて無い。
 殺す理由の方が、圧倒的に、多い。

 次の瞬間。
 冷静さを保たせていた最後の理性をテュールは手放した。
 理性が落ちていったのは、怒りという名の燃え盛る炎の中だった。



04.呼び声

 遠くから声が聞こえた。
 叫んでいる。
「……テュー……やめ……」
 切れ切れにしか聞こえないその声は、たしかに自分に対して発せられているものらしい。

 だが。
 遠すぎます。ヘイムダルさん。

 左手で、首を絞めている紐を引く。
 私は、今はもう何も考えることも出来ない、ただの復讐鬼です。耳に入る貴方の声も、意味をもった言葉として捉えていません。
 それに。
 実力でこいつの殺害を止めるにも、貴方との距離は遠すぎます。

「オマエ……ガ……ワタ……シニ、ナニヲシタカ……ダト?」
 フェンリルの首を絞めながら、我知らず、声が漏れる。
 長い間、発したことのない、自分の言葉。
 自分で聞いても、途切れ途切れにどもっていて、聞き取りづらいことこの上ない。
 だが。
 死に行くこの男に、自分のしたことくらいは教えておきたい。
 意味のないことかもしれないが。

「オマ……エハ……ワタシノ……アルジヒュミ……ルヲ、シチニオイ……ヤッタ……! ワタ……シガ……ビョウキ……ダッタコトヲ……タテニシテ!」
 酸素を求めて口をパクパクさせているこいつは、果たして私の言葉をちゃんと聞いているのだろうか?

「オマエ……フェンリル……オマエガ……ワタシニ……ナニヲシタ……ノカ……ト、イッタナ……!」
 首を絞める手を、わずかに緩めた。
 フェンリルが再び咳き込む。
 遠くから、再び声がした。低くて、しかし遠くまでよく通る人間の男性の声。

 最初は、ただの変った親父だと思っていた。
 でも、ヒュミルが信頼し。
 私の命を救い、時間をくれた。
 今は心から感謝している、恩人の声。

 ありがとうございました。

「オマ……エハ……ワタシノ……モットモ……ダイジナ……ヒトヲウバイ……」
 右手に持っていた剣鉈を、逆手に持ち変える。
 視界が赤い。血が、目に入ったのだろうか。

「マッテイタハズノ……ササヤカ……ダケド……シアワセナ……ミライヲウバッタ……エイエンニ……!」
 ありがとうございました。
 お陰で。
 私は今、こうして復讐を遂げることが出来ます。

「カーラ! テュールを止めてくれ!!」
 視界の隅にちらついた白い巻毛のアイルー。
 勢い込んでこちらに走ってくるのがわかった。
 だけど。

 それでも遅すぎる。

 私は、逆手に持った剣鉈に全体重を乗せて振り下ろした。
 
 その瞬間に頭をよぎっていたのは。

 ヘイムダルさんの顔。
 どこか寂しそうなユヅキの笑顔。
 傷だらけの村長の明るい顔。
 いつも照れたような、それでいて大人ぶるロキの顔。その後ろをついて歩くフレイア。
 無口な黒猫のソグン。
 私が守る任務の一端を引き受けた村。
 村人たち。子供たち。
 仲間たち。私は自分のことに一杯で、あまり打ち解けることがなかったけど、状況が良ければ友達になれていたのだろうか。

 そして。

 ヒュミルの顔。
 悲しそうな、ヒュミルの顔。

 その顔を見てやっとわかった。
 私がヤツを今まで殺さなかった理由。
 ヒュミルが悲しむかもしれないと思ったから。
 私が、日常と、その先にある新しい未来を失うのを、悲しんでいたから。

 でも。
 
 でも悔いはないよ、ヒュミル。
 私が望んだ未来は、今はもう無い。
 あの時、一緒に食べた残飯を、また……。

 全ては一瞬の事。

 剣鉈が刃の根本まで突き刺した感触が、衝撃となって私の手を襲った。



05.未来へ
 
 テュールが剣鉈を振り下ろし、動きを止めた。
 その次の瞬間、カーラがタックルをして、二匹はもんどり打って転がっていった。
 
 その二匹を、駆けつけてきたヘイムダルが抱き起こす。
 素早く状況を確認し、彼は叫んだ。
「よくやった! テュール! オマエは……! 本当によく……」
 感無量という感じで言葉をつまらせるヘイムダルの目の前で、首を振りながらカーラが身を起こす。
「ま……間に合わなかったニャ……」
「いや、オマエもよくやった。あの距離からよく走ってくれた」

 ヘイムダルに抱きかかえられたテュールは、呆然としながら、フェンリルを見ていた。

 その顔スレスレの地面に、剣鉈が根本まで突き刺さっていた。

 首を絞められた苦しみのためか、それとも剣鉈を突きつけられた恐怖のためか、フェンリル本人は涙とよだれを垂らしながらみっともなく気絶していた。

「……グ……ニャ……」
「よくやったぞテュール! お前は、復讐の念を抑えた! それは……それはただ復讐を果たすのよりもずっと難しく、辛く、そして価値のあることだ!」
 興奮のため、普段よりも大声のヘイムダルの声がテュールの耳に響く。
 
 自分は確かに殺意を持って剣鉈を振り下ろした。
 冷静でなかったとは言え、狙いを外すような距離ではない。
 カーラが止めに入ったのは、振り下ろした後。
 他人に止められたわけでもない。

 なぜ攻撃が外れたのか、自分でもわからない 
 だが。
 剣鉈を逸したのもまた、確かに自分の意思だったように思う。
 
 一つ、思い浮かぶ。
 ヘイムダルやユヅキ、村長。仕事、そして仲間たち。村での生活を構成していた要素の、何か一つでも欠けていたら、私は今頃フェンリルの返り血に染まっていただろう。

 その考えは、テュールの中で確信となっていった。

 テュールの眼から涙が流れ出した。

 ヘイムダルがテュールを抱きしめる。
「俺も、そいつは殺したい。殺しても飽き足らない」
 囁くように、ヘイムダルは言う。
「赦せなどとは言わない。俺もこいつは赦せない。だが……」
 ヘイムダルの眼からも涙が流れる。
「殺してしまっては、そいつと一緒になってしまうんだ。今を失い、未来を失う」
「……ヒュ……ヒュミル……ノ……イナイミライナンテ……ノ……ノゾンデ……ナイ……ニャ」
 泣きながら、テュールが言葉を放つ。
 ヘイムダルは、一瞬だけ驚いた表情を見せたが、涙を拭いてからテュールの顔を覗き込むようにして言った。
「だが、ヒュミルは願っているはずだ。たとえ自分が居ないものであったとしても、お前に良い未来が訪れることを」
「………………」
「お前はよく我慢した。お前はこれまでの運命、その全てに打ち勝ったんだ」
 
 一瞬の静寂を経て。
 テュールは大声を上げて泣き出した。

 その光景を見ていたカーラが、ふと視線をフェンリルの方に移す。
 
 醜態を晒しながら気絶している男のそのすぐ隣。
 カーラが見ている前で、地面に突き刺さっていた剣鉈は根本からポッキリと折れ、柄が地面の上に転がった。
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category: モンハン小説

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