モンハンブログ 週末の笛吹き

主にMH3GとMH4、MH4Gそしてモンスターハンタークロスのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。

モンハン小説『週末の笛吹き』 第六話 その2 黒い飛竜と密猟者 

 一日遅れましたが、なんとかモンハン小説週末の笛吹き、第六話その2を載せることが出来ました。

 幾つか、解説など。

↓話の緊張感がなくなるかもしれないので、一部隠し文字にします。
 今回出してみた黒いリオレイアは、MHFにいる「黒レイア」ことUNKNOWNではなく、ちょっと特殊な個体のリオレイア。
 生態的に戦闘に特化しているけれど、リオレイアの枠を超える強さがあるわけではありません。
 目の前でエロドナイトどもにイチャつかれお怒りの模様(違う)。
 ちなみに、昔ヘイムダルさんの部隊を蹂躙した飛竜はUNKNOWNという設定。


 今回、少しだけ名前と性格を解説している十一匹のアイルー達。
 ロキとトールとハールバルズ(第一話登場)以外は全部北欧神話のヴァルキリーの名前から取っています。
 性格は、その名前の意味などから連想して作ってみました。
 北欧神話の固有名詞一覧
 こことか参考にしています。

 どうでもいいですが。
 テュールが独白の中で「よい相手と番いになり」という表現をしていますが、結婚をし、ではなく番いになりという表現をしているのは、なんというか獣人ゆえ。なんだかんだでアイルーと人間とはちょっと感性が違う感じ? 特に原始的な本能に基づくことに関しては。

 まあそういう書き手側のアレなアレとかはともかく。

 テュールがお怒りの第6話その2。
 
 お楽しみいただければと思います。


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01.白い巻き毛の美しきアイルー

 ヘイムダルが村の防衛のために雇った十一匹のアイルーたち。
 その多くが、問題児と呼ばれるような若いアイルーたちだった。

 例えば最も若いアイルーのロキが兄貴と慕う、無口な黒猫のソグンは、アイルーたちからの信頼は強かったが、強い正義感と妥協しない精神力と極めて低いコミュニケーション能力のため、村人と摩擦が生じて傷害事件を起こしたことがある。
 彼を慕うロキは、活発で頭の回転も早く明るい性格だったが、ソグンとトラブルを起こした村人へ不信感を持ち、ヘイムダルに鍛え直される前は、その能力の殆どを村人へのイタズラに使っていた。
 その他にも、頭は良いが合理主義すぎてアイルー仲間の中でも浮いてしまっていた雌、ヘルヴォル。
 カンは鋭いが不思議ちゃんな性格の雌のゴンドゥル。
 走るのは速いがチャランポランな性格の、パープルの毛並みの雄であるスヴィブルなどがいる。

 もちろん、マスカット色の雄、エイルのように温厚な性格の人格者や、気は優しくて力持ちのスルーズル、アイルー農場で肥料・土壌改良担当として働き、周囲の信頼を得ていた黄トラの大柄なトールのような存在もあったが、基本的にはゴロツキと言われていたようなアイルーが多かった。
 
 そんな十一匹のアイルーたちの中でも「バカ」と呼ばれる者が二匹、居る。

 その片方は、青ブチの雄であるゲル。
 騒がしい性格の戦闘狂で、とにかく自分より強い相手に突っかかっていくという困り者である。
 
 そしてもう一匹。
 白い巻き毛の美しい雌で、ロキに次いで若い「カーラ」がいた。

 彼女はとにかく混沌とした状況を好み、安定を嫌い、事あるごとに騒ぎを巻き起こす。
 恐れ知らずというよりも、敵意や恐怖、興奮といった強い感情で快楽中枢を刺激するような性格なのである。

 真面目な意見に対しては茶々を入れ、コミュニケーションはとりあえずイジりから始め、怒られそうになった時にはいつの間にか姿を消している。

 意識的、無意識的に、事件のないところに事件を起こす。とにかく場を引っ掻き回す。
 そんなバカだった。

 仲間である他の10匹のアイルーたちからさえ性格破綻者とみなされており、ヘイムダルでも扱いに困ることがしばしば。
 そのくせ、思考や行動には鋭いものがあり、それが逆に場の混乱を助長するのである。
 見た目こそ美しいだけに、その異常性は際立っていた。

 今回。
 南西第三ベースキャンプを担当していたのは彼女であり。
 密猟者発見の打ち上げ音爆弾を放ったのも彼女である。

 


02.アイルーたち

 その日、前任のロキから第三ベースキャンプの駐在任務を引き継いだカーラは、キャンプ周辺の監視に出て、密猟者フェンリルを発見した。

 監視をしながら、フェンリルがキャンプを張るのを確認した後ベースキャンプへと戻り、打ち上げ式音爆弾で密猟者発見の報を発した。
 彼女の鋭敏な嗅覚は、一度発見した密猟者ならばペイントボールを投げつけたのと同じくらいの認識でその所在を察知する。目を離しても捕捉に問題はない。
 打ち上げ音爆弾の轟音で密猟者が逃げ出すかどうかは賭けであったが、モンスターに較べて危険度の低い相手である。逃げ出して別に問題はないとも思っていた。

 むしろ彼女の関心は、音爆弾の連絡でロキが戻ってくるかどうかにあった。

 彼女が音爆弾を打ち上げた直後、今度は南西の第四ベースキャンプで飛竜襲来を示す音爆弾が打ち上げられた。
 カーラは、ロキはそちらに行くだろうと少し残念に思ったが、予想に反して彼が戻ったのはカーラの待つ第三ベースキャンプだった。ロキがそこに戻ったのは、ただ距離的に近かったからという理由ではあったが。

 とにかく密猟者を再度発見し、見張らなければならない。
 ヘイムダル隊長の到着を待つべきなのだが、緊急でもある第四ベースキャンプに直行する可能性が高い。
 仕方がないので、カーラはロキをからかいながら過ごすことにした。

 そんなこんなで時が過ぎる。

 突然、ガサリと笹薮が鳴った。
 ヘイムダル隊長がこちらに来たのか? と、思ったが、姿を表したのはオトモアイルーのテュールだった。
 何があったのかは知らないが、見たこともないほどに眼を血走らせた、その必死の表情はカーラの興味を引いた。
 
 カーラは、テュールがあまり好きではなかった。
 
 ヘイムダル隊長のもとで、何も喋らず、他のアイルーともつるまず、ひたすらに捕獲の技を磨いていたテュール。その姿はカーラにとってお高く止まっているように思えたのだ。

 だが、今日のテュールの様子は、普段とは違っていた。
 テュールは、カーラに身振りのジェスチャーで音爆弾の詳細の説明を求めた。

 カーラは思った。
 感情のないロボットみたいなやつだと思ってたが、どうもそうではないようだ。
 今まで興味がなかったが。
 仲間に引き入れたら。

 あるいは意外とイジり甲斐のあるアイルーなのかもしれないニャ。

「付いてくるニャ、テュール」
 カーラは言った。
「密猟者を発見したニャ」
「ニャ! 俺が案内するニャ!」
「ロキお前、密猟者の匂いを解っているのかニャ? ガタガタ言ってないで、ここでヘイムダル隊長からの連絡を待つニャ。伝令が来るかもしれないニャ」
 カーラの正論に対して何か言いたそうなロキに、彼女は更に追い打ちをかけた。
「おとなしく出来ないってんニャらいいニャ。お前がフレイアに吹き込んでやらせたイタズラの数々、すべて隊長にチクるニャ」
「ニャ……ニャにを……言って……」
「フレイアなんて小娘、ちょっと興味を引くようなモノをチラつかせたらイチコロニャ。ネタはすべて上がってるニャ」
「……あ……あんニャろう……裏切りやがってたのか……」
「とにかくお前はここでおとなしくしてるニャ。……さあ、行くニャ、テュール」
 
「テュールを止めるように」というヘイムダルの指示は、まだ第三ベースキャンプには伝わっていない。
 それがあれば、さすがにカーラでもテュールを止めに入っただろう。

 だが。運命はそうは動かなかった。

 さて。
 この日、テュールをカーラが先導したことがきっかけになって、この後二匹は友情を育んでいくことになるのだが。
 この時点では、それは本人たちですら予想し得ない未来であった。




03.黒いリオレイア

 ヘイムダルは、ギルドナイトの二人と共に第四ベースキャンプへと急いでいた。
 目的は、村にとって最大の脅威であるリオレイアの足止め。
 しかし、その心はテュールのことで占められていた。

 間違いなく、ヤツはフェンリルを殺しにかかる。
 ヒュミルを喪失したショックで言葉を失い、黒い毛並みが白くなってしまったほどだ。その恨みは想像を絶している。ギルドナイトのヘルが、フェンリルを殺せば危険な獣人個体として命を奪うと宣言したが、そんなものが足止めになるはずもない。

 死を決して。
 あるいは、死してヒュミルのもとに行くという気概で、テュールはフェンリルを殺そうとするだろう。

 今、第三ベースキャンプに居るのはカーラ。
 ヤツは、性格には難があるが常に捨て身で行動するため、その戦闘能力は高い。
 エイルの伝令が間に合えば、二人がかりならばまず確実にテュールを止められるだろう。

 問題は、テュールがエイルに先駆けて行動している事。
 伝令が間に合わなかったら……。
 しかし、自分ではアイルーたちほどに早くベースキャンプに移動することは出来ない。
 ここは、ヤツらを信頼するしかない。

 ヘイムダルの心は、彼にしては珍しいほどに焦り、混乱していた。

「そんなにあのアイルーが大切かの? ヘイムダル曹長?」
 並走するヘルが、ヘイムダルに声をかけた。
 ヘイムダルは全力疾走しているのだが、ギルドナイトの二人は平然とした顔をしている。さすがに体力に差があるようだ。
「心配が顔に出ておるぞ?」
 ヘイムダルは無言で走った。
 こいつらさえ居なければ、フェンリルが来ようが、リオレイアが来ようが、どんな結果であってももみ消すことが出来たのだ。

 疫病神め。
 心のなかで毒づいた。

 その時。

 森がざわめいた。
 
 巨大な翼が発する風圧が、樹々を揺らしている。
 羽音が耳を突く。

 立ち止まったヘイムダルとギルドナイト二人の目に、上空を飛び去るリオレイアの姿が飛び込んできた。
 日没間近の夕日に照らされた、濃い緑、むしろ黒に近い鱗を持ったリオレイアだった。




04.フェンリル

 フェンリルは森の中。
 空から身を隠すように、巨樹の下をキャンプ地とした。

 とは言えテントもなく、ただ肉焼き器で生肉を焼いているだけである。
 非合法の密売組織に飛竜の卵を渡すまでは、とにかく身軽さが命。無駄な荷物は殆ど無い。

 見た目には締まった体つきをした、狼のような鋭い視線の中年男性である。
 卵を抱えての逃避行となってから殆ど脱ぐことが出来なかったロックラックシリーズの防具に、ゲリョス素材の帽子と腕当てを、今も付けたままにしている。

 木にはライトボウガンの「ショットボウガン・碧」が立てかけられ、その近くには赤子の抱っこ紐にも似たキャリースリングと、それに包まれている金色に輝く卵があった。

 夕闇が迫る中、肉焼き器の炎に照らされて、卵はヌラヌラと鈍く輝いていた。

 もともと、この金の卵は密売組織の極秘依頼によって情報を得、密漁してきたものである。
 ガルガリ河の下流。
 南に広がる平原で、リオス種の住処になっている危険な土地から苦労して盗み出してきた。
 通常、リオス種の卵泥棒で危険なのは親たちの生息圏内に居る間だけで、一度その外に出てしまえば、あとは普通に運搬をすればいい。
 それであれば、彼にとっては慣れた仕事だった。

 だが、今回は違った。
 黒い色をしたリオレイアが一匹、どこまでも彼を追ってきた。

 河伝いに逃走しながら、なんとかガルガリ大森林に逃げ込んだが、南の平地では被害も出ただろうし、ギルドからも目を付けられてしまったはずだ。

 散々な目にあった。と、彼は独り言ちた。

 この森に一時的に身を隠してリオレイアやギルドの追手を撒き、その後に更に北上して密売組織の秘密事務所にこの卵を納品する。
 そしてほとぼりが覚めるまで、しばらくは活動を休止しなければなるまい。
 幸い、というか、この卵の売値は普通に取引されているものに較べて遥かに高価である。このクエストに成功すれば、暫くの間は遊び暮らせる。だからこそ、面倒を覚悟で受けたのだ。

「しかし、何なんだ? あのリオレイアは……?」
 肉の脂が焦げる、ジジ、という音を聞きながら、フェンリルは一人つぶやいた。
「卵を抱いていたのは、別のリオレイアだったはずだ……。そもそも生息圏を超えて追ってくる飛竜など普通ならばありえん。鱗の色もおかしかったし、何か特別な個体なのか?」

 あるいは……。
 彼は炎に照らされている黄金の卵を見た。

「この卵が特別なのか?」

 色からして、通常の卵とは違う。密売組織もわざわざ高い依頼成功料を約束している以上、ただの卵ではないのだろう。組織がどこからこのような卵の情報を得たのかは分からないが。

 なんにせよ、今は身体を休め、次の日に備えるのみだ。
 彼はこんがりと焼けた肉の塊を、振り上げるようにして肉焼き機から取り出した。
 これを食べて、眠る事にする。

 ガツガツと、異常に速い速度で肉にかぶりつき、あっという間に骨だけにする。
 早食い早便は密猟者の常である。フェンリルもその例に漏れなかった。

 胃袋を満たして骨を捨て、数少ない持ち物の一つであった携帯型肉焼き器を小さく畳む。それをリュックに入れると、フェンリルはゴロリと横になった。
 日はすでに暮れ、火も消してしまったため、彼の姿は暗闇に紛れ、例え敵が近くに来ても視認することは困難だろう。
 
 彼はゆっくりと目をつぶった。

 揺らぐ草花のこすれる音が、弱い風を感じさせる。虫がフェンリルの存在を受け入れ、再び鳴き始める。

 静かな森の中の夜。
 ふと、フェンリルは上体を起こした。

 虫の音が、消えていた。

 無言のまま、卵を抱き紐ごと身に付ける。
 そして気配を消したまま、彼は移動を始めた。




05.黒き守護者

 森の上空を旋回していたリオレイアは、追ってくる存在に気がついた。
 人間が三人。
 匂いや気配からして、あの卵泥棒ではない。
 だが、敵対者であることは間違いないだろう。森に入る前にも、何度か同じような格好をした人間たちから襲撃を受けた。
 反撃して黙らせ、卵泥棒を追い続けたが、その仲間たちだろうか。逆恨みされたのかもしれない。

 もっとも、恨み骨髄に達しているのはむしろこちらである。あの卵を奪われたのだ。

 卵を取り返すのが、自分の使命である。
 自分はそのために生まれた存在である。

 通常のリオレイアと違って卵を抱かず、雄と番わず、ただ群れの守護を司る。
 私は黒き守護者である。

 私のような存在は、自分の意志を超えた、群れの、あるいは種族としての意思が産んだものであろう。
 それ故に、私は強い。
 種の存続という重要な役目から離脱し、戦闘に特化した存在なのだ。
 追ってきている者たちが、卵を取り戻す邪魔をするつもりなのであれば。
 まずはそちらから排除する。

 リオレイアは滑空し、樹々の途切れた広場を目指す。そこでホバリングしながら、ゆっくりと着地し始めた。

「やれやれ、あれを追えば卵泥棒を勝手に見つけてくれるかと期待したが、気づかれたか」
 ヘルが余裕のある表情で言った。空を飛ぶリオレイアのスピードにも負けない程の速力で、着地点に駆け寄って行く。それを追うのはガルルガとヘイムダルだが、さすがにヘイムダルは息が上がりかけていた。
 
 着地する際に翼が発する風圧が、下生えの草を、そして樹々を大きく揺らす。
 なんとか近くまで来たヘイムダルが、舞い散る枯れ葉や土埃に表情をしかめ、腕で顔をガードした。

「こうなっては仕方ないの。先にこちらを仕留めて、ゆっくりとフェンリルの阿呆を探すとするか。……ヘイムダル殿? お主の配下のアイルーは、ちゃんと密猟者を探しているであろうな?」
「……今、第三ベースキャンプに居るカーラは鼻が鋭い。一度見つけた以上、フェンリルの匂いだけで追跡できるはずだ」
「それならば、多少、時間をかけてもよいか。人殺しばかりで飽き飽きしておった。たまにはモンスターを相手にせねば、精神がイッてしまう」
 笑いながら、ヘルは気の狂ったようなことを言う。
 着地したリオレイアは、三人に軸を合わせて、威嚇の咆哮を放った。
 ヘルは不敵な顔をしてそれを受け流し、ガルルガはその装備であるガルルガフェイクの効果で咆哮を無効にする。
 ヘイムダルだけが、その凶暴な雄叫びに顔を背けた。
 
 その時。
 ガルルガがヘイムダルに近づいた。
「ここは我々が引き受けます。ヘイムダルさんは先に。……あのコを……テュールを止めてやって下さい」
 ヘイムダルはそれを聞き、一瞬「信じられない」という表情をした。
 ヘルはただ威嚇してくるリオレイアを不敵に睨みつけている。ただ、少しだけ苦笑いのような表情を見せた辺り、聞いていない振りをしているようだった。
「……わかった。ここは任せる」
 ヘイムダルは、ガルルガの肩をポンと軽く叩いて、その場を後にした。

 ガルルガが後ろ腰に差していた片手剣を引き抜いてヘルの隣に並ぶと、彼女はニヤニヤと笑いながら言った。
「見習いのそなたに、フフ、場を仕切る権限などないぞ?」
「……心得ています」
「フフ、まあいい。そこに犯罪と腐敗と無秩序があれば、昨日までの上司であっても斬る。それがギルドナイトじゃ。上の命令をただ聞くだけの犬に務まるものではない。……だが、今回の事は秩序のための行動ではない。お主の個人的なしがらみより発したこと。これで、見習いの肩書が消えるまでの期間が、相当に伸びたと思えよ」
 ヘルの言葉を聞き、ガルルガは少しの間を置いて、ボソリとつぶやくように言った。
「それだけ、あなたと共に行動できる期間が伸びたと思います」
 ニヤニヤと笑っていたヘルは、虚を突かれたように驚きの表情を見せ、そしてガルルガから目を逸らした。
「言いおるの……いいか、ヘイムダルとのやり取り、この貸しは高く付くぞ。フン、昨晩いいだけ攻め立てられた仕返し、今宵果たしてやるからな、覚えていろヒュ……」
 リオレイアが再び吠え、ヘルの言葉の最後はかき消された。
 
 咆哮を終えたリオレイアが火球を放ち、戦いの火蓋が切って落とされる。
 そして。
 一方的な殺戮が始まった。



06.テュールの惆悵

 肉を焼いているフェンリルを視認して、カーラとテュールは笹薮の中に身を潜めた。

 肉を焼き、食べ、火を消し、横になる。
 フェンリルが隙を見せるまで、二匹は気配を消して待った。
 
 その間、テュールの脳裏には昔のことがよぎっていた。

 まだ自分がヒュミルの隣に居た時代。

 彼は、行き倒れて餓死寸前だった自分に、食べ物を分けてくれた。
 見ず知らずの死にかけた子アイルーなど、放っておくのが普通だ。
 その時にもらったのは残飯だった。ヒュミルも、それしか持ち合わせがなかったのだ。
 自身も食うや食わずで、残飯を漁りながら、ヒュミルは私を助けてくれた。
 今なお、あの時の残飯ほど上手いと思った食事をしたことはない。

 その後、私は彼と一緒に狩りに行った。

 ヒュミルはひょろりと背の高い、しかしまだ幼いと言っていい年代の男の子で。
 食べるものもなく、着るものもボロボロ。
 パーティを組んでくれるような相手も居らず。
 砥石も買えないから、錆びて切れ味など無いに等しかったハンターナイフをもって狩場に行った。

 普通だったら、オトモになろうと思うアイルーなど皆無だったろう。
 だが。
 私にとってはそこが……彼の隣こそがもっとも幸せを感じる場所だった。
 
 ある時、ヘイムダルという随分と歳の行ったハンター教習生がヒュミルに話しかけた。
 その時には、ただの変わり者のオッサンだとしか思わなかった。

 ちょっとづつ。ちょっとづつ。
 ヒュミルは成長していった。自分も彼の助けになるように、精一杯腕を磨いた。

 ヘイムダル氏は、その後も集会所でしばしばヒュミルと席を共にした。
 彼に対する警戒心はだんだんと薄れていった。

 ある時、ヒュミルと私はドスジャギィを狩った。

 それがどうしたと、多くのハンターは嗤うだろう。

 だが、それは快挙だった。
 私達を嘲るハンターたちのうち、一体どれだけの者が。

 防御力など無いに等しいボロ着を着て、ただのジャギィの鱗にすら弾かれるような切れ味の片手剣を持って。
 わずか半日でドスジャギィを狩れるというのか。
 
 私は嬉しかった。誇らしかった。
 自分を救ってくれたハンターは、思いもかけず、素晴らしい才能の持ち主だった。
 私も彼に負けないように、最高のオトモになろうと心に誓った。

 ドスジャギィを狩ったという結果に目を見張ったのは、ヘイムダルさんただ一人だった。
 この頃から、私もヘイムダルさんを気に入り始めた。
 それに、彼が教習所を卒業して正式なハンターとしてデビューし一緒に狩りに行くようになれば、私達の人生も開けていくのではないかとも思っていた。

 だからこそ。
 私は自分が許せない。

 あの時。
 病に倒れた自分が。

 そのせいで、フェンリルの甘い言葉にヒュミルは乗らざるを得なくなったのだ。
 
 熱で朦朧としていたが、私は覚えている。
 私達の住処であった廃墟で、ヒュミルとフェンリルは話し合っていた。
 卵の密漁のため、リオレイアをおびき出せと、フェンリルは言っていた。
 成功すれば、そこのネコが医者に掛かるのに十分な金をやると。

 私は今でも夢に見る。

 あの時、自分が病気にならず。
 順調に実績を重ね。

 やがてヒュミルは恋をし、よい相手と番いになり。

 家庭を築き、子を設け。

 ささやかな幸せを掴み。

 そして私も変わらず、その頃にはベテランと呼ばれるようなオトモになって。

 共に狩りに行く。

 そんな叶うことのない、素晴らしく甘やかで絶望的な夢を。

 その全てを奪った相手は。

 いま、私の目の前で肉をむさぼりくい、ゲップをし、ゴロリとヨコにナッテ、ひとりシズカニネムロウトシテイル……。

 


07.殺意と恐怖

 カーラは、ただの見張りのつもりだった。
 
 だから、隣で静かにしているテュールの心の中が、燃え盛る狂乱の殺意に塗りつぶされていることに、最初は気づかなかった。

 フェンリルは肉を焼くと、すぐに肉焼き機の火を消してしまった。
 あたりは暗闇に包まれたが、そんなことは夜目の効く彼女たちアイルーにはあまり意味を成さない。

 フェンリルが横になった辺りで、カーラもさすがに退屈になってきた。
 密猟者の見張りなど、何の刺激もない。
 むしろ、第四ベースキャンプから音爆弾の知らせがあった飛竜来襲の方に行った方がよかったかもと思い、ふとテュールを見た。

 背筋がゾクリとした。

 基本的に温厚な種族であるアイルーが、こんな眼をするとは。
 これほどの怒りと殺意、いや、狂気に燃える目は生まれてこの方、見たことがない。
 こいつ……。

 カーラは強い興奮と激しい恐怖の両方を脳髄に感じた。
 こいつ、スゴいニャ。

 こんなゾクゾクくる感覚。そうそう感じられるものではない。
 思わず、カーラは身震いをした。
 
 彼女たちの身を隠す笹薮が、少しだけ揺れる。鳴いていた虫が、沈黙した。

 それに反応して、闇の中のフェンリルがむっくりと上体を起こした。
 キョロキョロと辺りを伺い、そそくさと卵を身に付け、ボウガンを担ぐ。

 しまった。と、カーラは思った。恐らく自分たちの存在が完全にバレたわけではないだろう。
 しかし密猟者特有の用心深さで、僅かな違和感ですら見逃さず移動を決意したようだ。

 追いかけるか?
 そう思ってカーラは藪からひっそりと出ようとした。

 その時、テュールに睨まれた。

 手を出すな。
 その口はそう動いた。極小さい声だったが、テュールは確かにそう「言った」。

 表情は冷静で、しかしその眼だけが爛々と燃えている。
 カーラは、その場に腰を落とした。というより、腰が抜けた。
 経験したことのない恐怖が、カーラの快楽中枢を刺激する。

 これは……クセになるかも……。
 
 一人で静かに笹薮を出てフェンリルを追って行ったテュールを、這いずるようにしてカーラは追いかけて行った。
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category: モンハン小説

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コメント

遅くなりましたが・・・

その1、その2と読ませていただきました♪



急にR指定感も出てきたりしましたが(笑)



楽しく読ませていただきました♪



今後の展開を左右する伏線もいくつか散りばめられていましたし・・・



続きが待ち遠しいです♪



更新は無理せずマイペースでしてくださいね~(^-^)/

けんゆう #028lExxE | URL | 2016/09/25 15:00 | edit

Re: 遅くなりましたが・・・

>>けんゆうさん

いつも読んでいただきありがとうございます。

R-18部分に関しては、実は自分としてはあまり納得していません。
もっとエロく書けなかったものか。
うーん、精進が必要です。

ちなみに自分の場合、文章の誤字脱字チェックや推敲のため、書いた本文は結月ゆかり嬢に読み上げてもらっています。
当然、この部分も……。

それはともかく。

更新に関しては、無理なことは無理と言うつもりですが、しかしあまりマイペースだと以前のように半年とか一年とか更新が空いてしまう可能性が……。
自分を叱咤するためにも、次の更新予定を宣言しながらやっていこうかと思っています。
もっとも。
宣言したことを100%守れるわけではないのですが。

ロキ #- | URL | 2016/09/26 20:17 | edit

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