モンハンブログ 週末の笛吹き

主にMH3GとMH4、MH4Gそしてモンスターハンタークロスのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。

◇ モンハン小説未来編 第五話 ◇ ~~ ウルズ、ローゲと出会う 後編 ~~ 

思っていた以上に長くなってしまいました。
今回。
構成した時には、


* ◇以下狩猟風景
* ローゲは、狩りではブーメランを使っている。
* 鱗や甲羅、あるいは鶏冠などをピンポイントで切り落とし、クックを狩った後や逃げ出した後に回収していた。
* ◇狩猟風景ココまで


これだけだった狩猟パート。

なのに何故か、本文を書いていたら突如イャンクック特異個体が飛来し。
しかも結構強く。
それだけで結構な文字数が……。

とにもかくにも。
なんとか金曜日に上げることが出来ました。

ヘイムダルさんたちの本編は、次回は結構重要な話なので、時間的余裕が有るときに書きたいのだけれど。
動画作成熱が冷めず、いまだそちらに多少の時間を割いてしまっており、なかなか手が出せない状況です。



物欲大社へお賽銭をあげる ミ⑤




 前回のあらすじ。
 ウルズが行き倒れのメラルーに肉を与えた。メラルーは、しがらみは作りたくないが、恩は返すと言い、次の狩り一回のみ、無料でオトモを引き受けると言う。
 不安視するロキやフレイアと狩りの打合せをしていると、そこにそのメラルーが現れた。
 彼は、ウートガルドの森のローゲ、と名乗った。




06.
 ウートガルドの森の名は聞いたことがある。
 私が地方のギルド集会所を巡っていた時、遠方の集会所でも更に辺境と呼ばれていた地区にある森だったはずだ。入ったものを幻惑するため、ハンターですら縁遠い森林で、人の集落も無い。
 ローゲはそこから一人でやってきたのだろうか。
「それはまた遠いところから流れて来たものニャ……ああ、俺はロキだにゃ」
 と、ロキが呆れたように言った。
 フレイアが、さっきまで表していた不信感を微塵も感じさせずに場を仕切った。
「私はフレイア。ともかくこれで揃ったから、事務所の受付に行きましょう」
 フレイアのその言葉をきっかけに、私達は屋外フードコートの席を立ち、事務所の方へと歩き出した。

 後ろを付いてくるローゲを振り返りながら私は言った。
「名乗っていなかったけど、私はウルズという。……今回は、イャンクックの狩猟なんだ」
「イャンクック?」
 聞き返すローゲに、私は説明する。
「ああ。だが一匹だけじゃない。最低でも5匹、出来れば10匹は狩りたいというのが、今回のクエストだ」
「……随分と狩るんだミャ?」
「今はちょうど、クックの繁殖期で……多少間引いておかないと、次の年に大繁殖してしまうんだ」
「そういうのは最寄りの村のハンターがするものなんじゃないのかミャ?」
 クエストの趣旨を説明する私に割って入るように、フレイアがローゲに言った。
「そう、本来はそう……なんだけど」
 今思ったが、フレイアは物事を説明するときに、ちょっとオーバーなほどのアクションを入れる。今回は歩きながら腰に手を当てて、背の低いローゲを見下ろすように話しだした。
「その森の辺りにある村のハンターが、数年前に引退してしまったの。だから後釜が見つかるまではギルドを通じてフリーのハンターに仕事が回ってくるようになったのよ」
「おいしい仕事なのかミャ?」
「報酬面ではそうでもないニャ」
 これにはロキが答えた。
「本来の依頼主は最寄りの村ニャんだが、ギルドを通してのクエストになるので、仲介料やら何やら中抜きされて、こっちに回ってくる金は目減りしてるニャ」
「……なんでそんなクエストを受けるミャ?」
「まず一つは、誰かが引き受けなければいけない仕事だから……ね」
 歩きながらフレイアが言う。
「見過ごしたら、来年にはクックが異常繁殖するのが分かりきっているのだから、ギルドはこの仕事を放っておくわけにはいかないの」
「……で、それをあえて引き受ける……お前たちにとっては慈善事業かミャ?」
「そんなわけないじゃない」
 ローゲに問われ、フレイアは小悪魔のような笑い顔を見せた。
「確かに依頼料は少ないけど、それ以外の旨味があるのよ」
「ほう?」
「ギルドに貸しを作るようなものだから、ちょっと素材を多く剥ぎ取って確保しておいても何も言われないし、何より実績としても低くない評価をされるのよ」
「なるほど。借りを返すと言った以上、どんな狩猟であっても従うが、そういう事ならばオレも納得できるミャ」
「……随分とドライな性格だな……」
 ローゲのことを、私は素直に評した。
 すると、それまでゆっくりしたペースで集会所に向かっていた一人と二匹の脚が止まった。
「?? どうしたの?」
 訝しむ私を、6つの瞳が見つめる。
 そして彼らは声を揃えた。
「お前が言うな(ニャ)(ミャ)」



07.
 集会所で予約していたクエストを確定し、その脚で狩場に向かう手続きを取った。
 機械人形のような、美しいが感情をあまり外に出さない受付嬢が、いつもの通り淡々と事務手続きを取ってくれた。

 ロキはフレイアのオトモアイルーとして。
 ローゲに関しては、私のオトモとして同行するという形になった。

 登録に関しては特に問題なく、フリーのオトモでもあるし、事後申告でもよかったらしい。
 ただ、受付嬢の補佐をしているアイルーたちが、ローゲを見て受付嬢に耳打ちをしていたから、おそらくメラルーであるということはバレている。
 もっとも、それを指摘して杓子定規に取り扱う方が手続き上面倒になるのだろう。種族的なことにはまったく触れられなかった。

 今回に関しては、急行のガーグァ車をギルドが用意してくれ、その日のうちに本来の依頼主である草原の村に入ることが出来た。
 村長は、でっぷりと太った温厚な人物で、その日の宿泊所として、引退したハンターの住居を提供してくれた。
 予め掃除はしてあったのだろうが、やはり人が居ない家は荒むようだ。どこか寂しげな印象のある住宅だった。
 ガランとしたその空き家に二人と二匹で泊まり、狩りの準備を整え、朝を迎えた。

 近接武器の扱いを得意とし、レイアネコレイピアを愛用しているロキとは違い、ローゲはブーメランを使用するとの事だった。
 ロキに比べても小柄で、しかも一般的にブーメラン系の武器は近接武器に比べて威力が劣る。
 オトモとしての経験はあるようだが、モンスターへのダメージはあまり期待できなさそうだ、と私は思った。口には出さなかったが。

 次の日。
 早朝から狩りを開始した。

 とにかく二~三日の間に、十匹近いクックを狩らなければならない。
 今となっては私一人でもクックには勝てる。
 しかし、数を狩るとなると、やはり効率がモノを言う。チームワークが大切になってくるだろう。

 狩猟の手順として。
 まずはロキがイャンクックの匂いを追う。
 この時期のクックは、発情期だからか異性を見つけるのに精一杯のようで、興奮はしているがあまり警戒心が高いわけではない。
 とにかく一匹で居る個体を見つけては、奇襲をかける。

 そのやり方で、一日目は夕方までに三匹を狩り、または捕獲した。

 日が落ちると、もともとの村付きハンターが設営したらしきベースキャンプへと戻り、その日の成果を報告しあい、体力回復のために出来るだけ早いうちに寝てしまう。

 それをある程度の間引きが終わるまで繰り返すのだ。

 二日目には、単体で居るクックは少なくなり、二頭同時の狩猟もすることになった。
 さすがに番いになるだけあって気が合うのか、興奮し、耳を逆立てて襲い来るクックたちはコンビネーションがよく苦戦した。

 結局二日目は、それでも四頭のクックを狩って帰投した。

 その日の夜。
 焚き火を囲み、肉を焼き、次の日の準備を整えながら。

 ロキはローゲに言った。
「思っていたよりもやるニャ、ローゲ」
「そうか? ダメージはさほど与えていないがミャ」
「いや、その割に随分器用に部位を破壊しているニャ」
「そうね。切り落とされた鱗や甲殻が随分と手に入ったわ」
「確かに。今回は報酬は少ないから、金になる素材が手に入るのは助かる。本当に」
 私だけ金に拘っているような言い方になったが、しかしパピメル装備のローンもまだ残っているのだ。仕方がないと思わないか?
「どうしたのウルズ。あらぬ方向にブツブツ言って?」
 いや、単なる独り言だよフレイア。

 ローゲは、褒められ慣れていないのか、モゴモゴとした感じでただ「役に立てれば何よりだミャ」とだけ言って、寝袋に潜ってしまった。

 そうして二日目の狩りは終わった。



08.
 三日目。
 出発する前に、フレイアが言った。
「ここまで狩ったのが雄3匹、雌4匹。間引きとしては十分かもしれないけど、もうひと踏ん張りして、あと2~3匹狩って終わりにしましょう」
「そうだニャ。どちらにしても今日で終わらせるニャ。さすがに疲れてきたニャ」
「分かった」
「了解だミャ」

 私達は、疲労こそ溜まってはいるが、しかしクックの狩りだしに関してはかなり洗練されてきた。
 まだ日が高くないうちに、はぐれているような一匹を狩る。
 しかしさすがにクックたちも警戒しだしたのだろう。
 辺りから気配が消え始めた。

「さすがにここまでかしら」
「匂いがしなくなってきているニャ。これだけ狩ったら、発情期で集まったイャンクックたちも逃げ出し始めたかもしれんニャ」
「じゃあ、昼を摂ったら戻る?」
「そうね、間引きには十分な数を狩ったし、もうこれでいいかも」
「……いや……まて……」

 今まであまり打合せに口を挟まなかったローゲが、終わりを相談し始めた私達に真剣な声で話しかけてきた。

「何か……来るミャ……」

 ローゲの言葉に、ロキが改めて鼻をヒクつかせる。
「確かに……何か……」
 その時、それまで晴れていた陽が陰った。
「……上ニャ!」
 ロキが叫ぶのと同時に大きな羽音が響き、風圧が髪を嬲った。

「ちょっと! 何よあれ!?」
「でかい……クック?」
 
 空から、通常個体の二倍はあろうかという巨大なイャンクックが降りてきていた。
 ただ大きいだけではない。
 存在感があり、色も他のものたちと違い綺麗な蒼色をしている。

「クックの主のようなものかニャ?」
「耳が立ってる……仲間を討たれて怒ってるな……」
「御託はいいわ。全員、散開して! 迎え撃つ!」

 蒼色をした巨大なイャンクックは、着地と同時に吠えた。
 空気がビリビリと震える程の音量で、わかっていても身体が硬直する。
 私達が動きを止めると、クックはそれを見計らっていたかのように、まずは一番近くに居たフレイアに向けて突撃した。
 フレイアは間一髪のところで盾を構え直し、それを受け止める。
 しかしクックはただ突進しただけではなく、フレイアのガードの上から連続でその巨大なクチバシを振り下ろした。
 さすがにフレイアもたまらず、ガードを崩され押し負ける。
 クックの啄みが無防備になったフレイアを襲った。
 その時、クックの咆哮とは違う、人間の耳では捉え難いほど高い周波数の音が辺りに響いた。
「音爆弾!?」
 私が振り向くと、ローゲが投擲した直後の体勢になっていた。
 耳のよいイャンクックには、音爆弾は非常に有効である。投げつけると、通常は棒立ちになってしまう。
 もっともその後、相当イヤなのだろう、基本的に臆病な性格のイャンクックが例外なく怒り狂うが。

 巨大な蒼いクックは、普通のイャンクックとは違い棒立ちになるような隙は見せなかった。
 しかし、さすがに目測を誤ったらしく、最後の啄み攻撃はフレイアを外れ、地面に突き刺さった。
 相当な力を込めていたのだろう。クチバシが地面にめり込み、一瞬だがその動きが止まる。
 フレイアは、その隙を逃さず盾を拾い体勢を立て直した。
「ありがとッ!」
 それだけを叫んで、今度はフレイアが反撃に出た。
 私も駆けつけ、両刃の手斧の形をした片手剣「ポイズンタバール」で斬りつける。

 クチバシを地面から引っこ抜いた青いクックは、尻餅をつくような形で後退し、力を貯めるように身を縮めた。

 反撃が来る。
 私はその時点で身を翻す。
 案の定、クックは可燃性の液を吐き出しながら、狂ったように走りだした。



08.
 その液も通常のクックとは違い、地面に落ちるとそこから火柱が立ち上るほどの燃焼性を持っていた。狙いを定めて吐いて来ているわけではないので直撃する危険性は少ないが、しかしその威力を目の当たりにした私達は怯み、イャンクックはその隙にこちらから距離を取った。
「手強いわね」
 私の隣でフレイアがつぶやく。
 確かに。
 身体も強いが、戦い慣れしている感じがある。
「あの連続の啄みは、私にとっては厄介なの。悪いけど……」
「分かった。私が囮になって引き付ける」
「お願い」
 普段ならば、巨大な盾を持つフレイアがモンスターと対峙し、その隙に私が攻撃するという戦法が多いのだが、今回は別だ。
 あの巨体から繰り出される連続攻撃は、動きの重いフレイアよりも身軽な私が受け持って、その隙に反撃してもらうのがベターだろう。
 私はロキを見た。
 ロキはその場で、穴を掘っていた。

「いくよ!」
「任せた!」
 私が飛び出し、クックの正面に立つ。
 攻撃するように見せて、その実、頭には回避のことしかない。クックは完全にひっかかり、反撃するように身体を回転させて尻尾で払ってきたが、私はその下を掻い潜り、脚に軽く一撃を当てると、そのまま前転して少しだけ距離を離した。
 クックは巨大な分、小回りには欠けるようだ。
 クチバシを利用した突っつき攻撃も、突進も、出だしが遅く距離が近いとむしろかわしやすい。
 だがその分、その一撃一撃は強力で、寸でのところを通過していくクックからは計り知れないパワーを感じた。

 フレイアですらガードしきれない連続の啄みを、身体をひねりながらかわす。
 その跡が大きな穴となって残る。
 飛び退りながら吐き出してくる可燃性の粘液を、こちらは横転してやり過ごす。私が居たところから立ち上る火柱の放射熱が、肌をチリチリと焼く。

 間一髪のところでかわしながら、それでも私はクックを誘い出していた。
 さっき見ていた、ロキが落とし穴を仕掛けていた場所まで。

 相手をよく見て。
 攻撃をするように見せかけながら回避し、私は落とし穴の後ろにまで到達した。雄牛のように脚で地面を蹴りつけ、イャンクックは突進してくる。

 これならばかかる!
 落とし穴が発動する。そう思った直前、クックは急ブレーキをかけた。
 これは完全に予想外の行動で、私のみならず、待機していたフレイアまで完全に引っかかった。
 落とし穴に向けて竜撃砲の用意をしていたフレイアが、珍しく顔を歪ませる。
 彼女の構えるホワイトガンランスの砲口から青白い光が漏れ出す。
 それを嘲るように、イャンクックはバックジャンプをして、場所を離れた。
 詳しくは知らないが、ここまで操作したら竜撃砲を止めることは出来ないのだろう。
 フレイアは反動に備えるため腰を低く構え、そして必殺の砲撃を暴発させた。
 
 爆音とともにたたらを踏んだフレイアが舌打ちする。
「失敗した!」
 上品とは言えない振る舞いなのだが、彼女がやると何故かやけに格好良く見える。
「仕切り直す! 砲身の冷却までどれくらい!?」
 ホワイトガンランスは冷却板が跳ね上がっており、白い煙が立ち上っていた。
「かなり! 竜撃砲には期待しないで!」
「分かった。コツコツやるしかない!」
 
 緊張感が一気に高まる。
 短期決戦は諦めるしかない。連日の狩りで疲労もある。少しまずい状況になってきた。

 だが、予想していた反撃はなかった。
 バックジャンプで距離をおいたイャンクックは、辺りをキョロキョロと見回し、大きく一声上げた。
 それは空気を震わすバインドボイスではなく、何かを確かめるような甲高い鳴き声だった。
 クックの鳴き声が、森のなかに響く。
 一瞬、その谺だけが場を支配した。
 クックの声は、何の反応も呼び起こさず、空に消えていった。
 激戦の最中。それは静寂を感じさせた。

 次の瞬間。
 クックはその場を飛び回り、私達を威嚇しながら、大きく羽ばたいた。
 近づこうとしていたロキが、その風圧で跳ね飛ばされるのが視界に入る。
 イャンクックはそのまま垂直に空へと飛び立ち、私達の攻撃がまったく届かない高度まで達すると、燃焼液を吐き出した。
 空からの攻撃に私達はなす術なく逃げ惑う。
 爆撃が終わった時。
 イャンクックの蒼い巨体はすでに遠く。
 戻ってくる意思が欠片も感じさせないほど早く、森の奥へと消えていった。



09.
「結局、あれは仲間を逃がすための陽動だったんだニャ」
 集会所のフードコートで、ロキが言った。
「最後の燃焼液の攻撃は? 逃げるんならそのまま逃げればいいのに」
「……おそらくは腹いせだろうミャ。仲間を討たれたことへの……」
 なるほどね。
 モンスターにも、思っている以上に「感情」というものがあるのかもしれない。
「何はともあれ、今回の狩猟にヤツの討伐が入っていなくてよかったわ。間引きには成功したんだから、クエストは達成よ」
 フレイアが、クレープを頬張りながら言う。しかし言葉ほどには嬉しそうではない。敗北感があるのだろう。
「なんにせよ、危なかった。みんな無事で何よりだよ」
 私が言うと、フレイアは「まあそれもそうね」と返し、クレープを一気に食べ、飲み込んだ。
 もったいない食べ方をする。もっと味わえばいいのに。
 
「ウルズ」
 フレイアをジト目で見つめる私に対し、ローゲが声をかけた。
「これを」
 彼が差し出したのは、綺麗な蒼色のウロコに、いつ掘っていたのか純度の高いマカライト鉱石だった。
「これで貸し借りは無しだ。オレはこれで失礼する」
「……え? いやちょっとまって……」
「待ちなさい」
 思いの外つよい口調で、フレイアが引き止めた。
「その蒼いウロコ。よく獲ってたわね。かなり珍しいものよ。一食の代金には高すぎるわ」
「まったくだニャ。器用にまあ……」
 ロキが呆れたように、しかしどことなく嬉しそうに言った。
「ウルズ。それを受け取るのであれば、今度はローゲからあなたへの貸しになるわよ」

 ……なんか、面倒くさいことを言い始めたぞ……?

「とにかく、せめて事務所までは同行して。報告してこないと狩りは終わったことにならないのよ」

 集会所事務所にて、クエスト達成報告用の書類を受け取り、書式に従って狩ったクックの頭数や、状況、場所、時間などを書き込んでいった。
 これは意外と手間のかかる作業で、その間ローゲは所在無げにイスに座っていた。
 
 書類に記入をしながら、フレイアが言った。
「ローゲ、あなた野良のままでいいの?」
「……良くはない……」
「そもそも何でこんな遠くにまで来たにゃ? いや、都合が悪ければ言わなくても良いがニャ……」
「別に隠すことは何もない。ただ、オレの生まれた集団がモンスターに襲われて散り散りになったから……」
「……どっかで聞いたことがあるような話ね」
 フレイアは私を見ながら答えた。
「私から見て、あなたはそれなりに有能なオトモよ。攻撃には期待できないけど、素材を分捕れるオトモというのは価値があるわ」
「……一度、別の集落に入ったことがある……だがそこもモンスターに襲われて……」
「なるほど。だからどこにも所属しないで、一人で居たのか」
 私は頷いた。
「自分がいる所には不幸が訪れると?」
「そこまでは思っていない。しかし……」
「しかし?」
「……いや、心の奥ではそう思っているのかもしれない……」
「はっきり言うけど、あなたの集落が襲われたのはただの偶然よ」
「……」
「不幸を招く体質なんてあり得ないわ。いい機会だから、オトモ及びニャンターとして登録してきなさいな。今。ここで。登録があれば、ギルドもそれなりに職を斡旋してくれるわよ」
「フレイア……お前はなんでいつもそう強引なんだニャ……」
「うるさいわねロキ。多少強引じゃなきゃ、世界はなんにも変わらないの」
「……いや、どちらにしてもオレはメラルーだミャ。アイルーと違ってオトモとして登録出来るのか……?」
「私もそこらへんの手続きは分からない」
「そんな無責任な……」
「ウルズ。だからと言って何もするなと言っているわけじゃないの。聞いてくればいいじゃない、そこに……」
 フレイアは目でカウンターで書類を繰っている受付嬢を指して続けた。
「その種の手続きのプロフェッショナルがいるんだから」



10.
 それでも尻込みしているローゲの首根っこを捕まえるようにして、フレイアは出来上がった書類と一緒にローゲを「提出」した。
「この子、オトモ及びニャンターとして登録できる?」
 微笑みながら。
 いかにも当たり前のように。
 フレイアは5~6歳は上であろう受付嬢に聞いた。
 受付嬢は、いつもの様に表情を変えず、少しだけ間を開けた。
「……一応、言っておきますと……」
 最初は考え考えという感じで、彼女は話しだす。
「アイルー以外の獣人がオトモやニャンターとして登録されることは、ギルドとしてそもそも想定されておりません」
 受付嬢の後ろで、数匹の補助アイルーが軽く頷いた。
 ロキにもそのケがあるが、人間社会に生きるアイルーたちが持つメラルーへの差別感は、思っていたよりも根深いのかもしれない。
「従ってアイルー以外は制度上登録出来ないことになっています……それはわたくしの権限でどうこう出来る話ではありません」
 そうか……。
 その辺りは確かにそうだろう。もっと上の方に掛け合わなければ。
「しかし……」
 ??
「私は事務一筋の受付嬢であり、狩場の視察などにも行ったことはありません」
「ふーん……それで……?」
 フレイアが、目を細め、唇だけで薄く笑う。
「従って、見た目の似通ったメラルーとアイルーを見分けることが出来ません。アイルーだと言われれば、そうなのだろうと信じるほかありません」
 見た目にはまったく冷静な彼女の言葉に、さっき頷いていたアイルーたちが、驚いた表情をしている。
「もし仮に、メラルーがアイルーだと偽って登録するってことは……?」
「メラルーとして登録することは出来ません。そのメラルーに種族的アイデンティティに拘りがなければ、アイルーだと勘違いして登録してしまうでしょうね」
「だ、そうよ。どうするのローゲ」
「……そんなもの、登録するに決まって……」
 言いかけて、ローゲは口を閉ざした。

 しばらくの間。彼は悩んだ。

 近くに来ていたロキが、今すぐ決めなくてもいいことだニャ……? と言う。
 受付嬢は、それはいつでも大丈夫です、と応える。
 そんなやり取りがあったあと。
 ローゲは言った。
「アイルーとしてオトモ、及びニャンターとして登録するミャ」
「……わかりました。……ウドン」
 受付嬢は、固まっていた白い補助アイルーに、ニャンター登録書類を用意するよう指示を出した。
 ウドンはハッとして、しかしそれからは躊躇いなく後ろの棚から数枚の書類を取り出し、受付嬢に渡した。
 受付嬢は、それらにざっと目を通し、記入する場所や肉球のスタンプが必要な場所にメモを書いた付箋を貼り、ローゲに手渡した。
「必要事項を記入したら提出してください。あとはこちらで処理をします。登録には書類提出後数日ほど頂きますのでご了承ください」
 書類を受け取ったローゲは、深々と頭を下げた。彼が頭を下げるのを見たのは、私は初めてだった。
「頑張ってください。万が一、登録項目にミスがあったとしても、実績を上げればそれが無視されることはないでしょう。後続に影響を与える可能性も低くはありません」
 普通の人が見れば、おそらくいつもと同じ表情に見えただろう。
 だが、人の顔色を伺うことに関してはプロである私にはわかる。
 
 受付嬢はかすかに、だが確かに。
 笑っていた。



ED.
 集会所を出ると、ローゲは私達にも頭を下げて「世話になった」とだけ言い、去っていった。

 ここでまた会うこともあるかもしれないし、一緒に一狩りすることもあるかもね、と、フレイアが言う。
 
 彼の姿が見えなくなってから、ロキがポツリと、メラルーにしては悪いやつじゃないニャ、と言った。

 先日の夜。
 見捨てることも出来た。いや、その方がずっと簡単で常識的な判断だった。
 これからはもう少し考えて行動しなければなるまい。ロキに言われた「ありもしない余裕を見せつけようとするのは、むしろ余裕のない人間がするものニャ」という言葉は私の小さい胸に刺さっている。
 それでも。
 自分のしたことは、悪い方向には行かなかった。

 そのことに、私は少なからず満足感を覚えていた。
スポンサーサイト

category: モンハン小説

TB: 0    CM: 4   

コメント

こんばんわ。
最近MHから離れていましたが、こういうお話を読むと胸が高鳴り、またあの大地を走り回りたい欲求が生まれてきます。

そして「ありもしない余裕を見せつけようとするのは、むしろ余裕のない人間がするものニャ」という言葉がものすごくずしりと響いています。
ほんと自分のことを言われたみたいでw

朔 #- | URL | 2016/08/27 23:48 | edit

Re: タイトルなし

>>朔さん

お久しぶりです。
読んでいただきありがとうございます。

逆に自分としては読んでもらったということが、書くことへのモチベーションに繋がります。
しかもそれでモンハン復帰の欲求が高まり、また言葉が響いたと言われると、自分の文章も捨てたものではないなと思い、自信になります。

自分もMHから離れていた時期があって、その時に読んだモンハンの二次創作で俄然ヤル気が出た事がありました。

自分の場合は、書きたいように書いていて他人への影響を目標としているわけではないので、そのような作品を第一目標とするわけではありませんが、しかし影響を受けていただけたと思うと嬉しいです。

ちなみに、その時に読んだのは。
「やる夫はソロハンターのようです」
http://yaruonichijou.blog.fc2.com/blog-entry-3276.html

載せてはおきますが、やる夫AAというかなり読む人を選ぶ表現形式です。
一応、参考までに。

内容はかなり熱く直球な、ハンターの成長物語です。

ロキ #- | URL | 2016/08/28 20:33 | edit

人を選ぶというか読めないというか

コメントを入れるつもりが別物語を読んでいた。一体どういうry

「やる夫はソロハンターのようです」
本編と、その後の話、大体読んできました。
こういう底辺から努力と根性と友情で這い上がる様な話は割と好み。
でも主人公の性格による。見た目は二の次で。気にはしますが。←

第五話完結お疲れ様です。

個人的にはローゲがアイルーとして登場で良かったです。
結構気に入ってます。悪ぶってて実はふつーに良い奴的な所が。w
ハンターとして出ていたら・・・変態の道まっしぐらだったんですかねぇ・・・
いや、あれはやらされてただけで。本人の意思とは関係無・・・関係無い、ハズ。

ローゲ含め、ウルズやら受付嬢やらにはシンパシーを感じるものがありますね。
フレイアやユヅキ、ヘイムダル氏みたいなデキる人達はなぁ・・・
好感は持てても共感を持つのは難しいんだよなぁ・・・。

ローゲは今回の件で、雇用待ちの状態になった、のかな?
ネコ嬢がスカウトしてきたオトモリストに並んでいるような状態?
ゲーム中だと継続雇用しかないだけど。
この場合は臨時と継続雇用の2種類があるのかな。ローゲは臨時枠しかやる気はないのだろうか?

とりあえず。

ヒュミルとテュールと違い、ウルズは記事コメント欄で未来展望を語られてましたし。
安心してウルズ&ローゲコンビは眺めていられますね。
あ、ローゲに何かある、なんて事は・・・考えない事にしておこう。

それと受付嬢。
普段の対応が対応だけに、今回の機転を利かせた対応は意外。
ぐっじょぶです。

yuki #Z0eBfVjg | URL | 2016/09/01 06:10 | edit

Re: 人を選ぶというか読めないというか

>>yukiさん

そこはうぃくさんが一年前に通った道だ……。
(参照:見たとは思いますがhttp://mhblog563.blog.fc2.com/blog-entry-674.html#comment_postのコメント欄)。

「ソロハンター」には、かなり色々と影響を受けています。
ローゲの語尾をニャスにしようか悩んでいたのはとことん秘密だニャス。

シナリオなどはかなり一本調子ですが、それ故に熱さがダイレクトに伝わって来る傑作だと思います。
個人的には作品としての評価は「モンハン自衛隊」の方が高いのですが。
しかし……あれは長い……。自分も途中までしか読んでいません。

ハンター版ローゲくんは、基本的にはちょっと変わったセンスの好青年というイメージでした。
ロキと、ロキの中に棲む72柱の悪魔と、その教師(ぽっちゃり系白衣で理系の若い女性教師)に弄ばれてしまっただけで、ヘンターではありません。

試験的駄文に住み着いたアイルー版ローゲ君は……言われる通り、悪ぶっているけど基本いい奴です。
だからこそ、きの式モデルズに慕われているのですが。

ちなみに。
アイルー版ローゲ君に対する想いは、きのゆかりん穏→Love 純→like 凛→favorite こんな感じ。
ただ、ローゲ君が最も頼りにしているのはきのマキさんだったり。
そう言えば、きのマキさん、新しいモデルが発表されたんだけど、扱いをどうしよう……。

それはともかく。

ウルズはもちろん最底辺出身。
未来版受付嬢も苦労してその職に付いた感じ。
ただし、努力して一流企業に就職したOLなので、能力自体は高い設定です。表情には出さないけど努力も勉強もしているタイプ。

まだ書いていない「モンハン小説外伝・こやし玉の女神」の主人公であるギルドガール「ムンム(仮名)」も、未来編受付嬢と出自的なキャラ設定は共有しています。
もっとも。
ムンムは無表情ではありませんし、恋人もいますが。
彼女の場合、ガルガリの滝の村の村長にガールズトークを持ちかけられても、彼氏のことを「普段はポーチの奥に追いやられているけれど、もしもの時にはこれ以上頼りになる存在はない……そう、こやし玉のような存在です」と真顔&真剣に答えちゃうようなキャラ。
未来版受付嬢とは書き分けることは容易いかなと思います。

フレイアは、基本的には田舎の娘なのだけど、とにかく先生たち(ヘイムダル、ユヅキ、ロキ)に恵まれました。

ユヅキはエリート層ですね。
地方の良家の子女で、美人で勉強もでき人望もあったタイプ。多分女子高出身。
地元じゃ負け知らず。
しかし、それゆえに就職先のレベルが高く、その中で突出することは出来ませんでした。
中学の超優等生が、ハイレベルな進学校や東大、京大などに進学して埋もれるタイプ。
自分も、共感は持てないですww

ヘイムダルさんは、今でこそかなり優秀ですが、出自は良くはないです。
厳しい仕事(国境警備隊)で揉まれて、色々と成長したタイプ。
基本的には、日本社会で例えるならば中卒だけど仕事は出来て高学歴の後輩や同僚からも一目置かれる、叩き上げタイプです。

あ。
あと、ヒュミルはつg……いや、やっぱり秘密。

未来編のローゲは、今までは天空山とかに彷徨いているスカウト待ちの野良アイルー(いや、メラルー)。
登録後は、ハンターの専属アイルーという段階をすっ飛ばして独立。
なんせニャンター登録もしていますので、ソロ狩猟が可能になりましたし。

実は、未来編のローゲに関してはあまり先のことを考えていません。
ただ、ウルズ晩年まで「腐れ縁」として色々付き合ってくれると思います。

それにしても。
ロキ(オトモ)なんかは、基本的にフレイアよりも年上として書いていますが。
カプコンでの設定では、アイルーの寿命とか年齢設定とかどうなっているんだろう……?

ロキ #- | URL | 2016/09/02 23:40 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://mhblog563.blog.fc2.com/tb.php/871-83add533
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カウンター

プロフィール

リンク

インデックス

MHロキのツイッター

人気ブログランキング

検索フォーム

最新記事

最新コメント

RSSリンク

アクセスランキング

月別アーカイブ

カテゴリ

ブロとも申請フォーム

QRコード