モンハンブログ 週末の笛吹き

主にMH3GとMH4、MH4Gそしてモンスターハンタークロスのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。

モンハン小説未来編 第四話 「ウルズとフレイア、モス卿と出会う 後編」 

 毎週、金曜日には小説を更新! と、自分の中で決めていたのですが。
 まあなんとか果たせているようで自己満足。

 攻撃を欲張って被弾したウルズ。
 そこにアドバイスを送るモス卿。

 モンハン小説自体が、MH3GからMH4Gの頃に思いついた話だったのですが、だんだんとクロス要素も増えてきています。
 しかし、本編でのヘイムダルさんの武器「ギャラルホルン」が発掘武器だったり、設定が色々と混じってしまって行くとは思います。
 その辺りは、ひとつ悪しからずよろしくお願いします。


物欲大社へお賽銭をあげる ミ⑤



06.
 私はショゲ返っていた。
「だからあんなに攻撃を欲張るなって言ったじゃない!」
 フレイアが、人差し指を私の額に当てながら言う。
「装備を新しくして防御力が上がったのは確かだろうけど、ハンターは死んじゃう時には死んじゃうんだからね」
 フレイアが切なそうな表情をして詰め寄って来る。近い近い、顔が近いよ。
「分かってはいた……つもりだったんだ。……本当に……ごめん……」

 場所はベースキャンプ。
 もともと炭鉱夫組合が火山見回りのために設営した拠点で、かなりの高台に作られているためモンスターに襲撃される恐れは無い。
 モス卿は、プーギーと子モスに餌のキノコを食べさせながら、私達のやり取りを見ていた。

「とにかく、行けると思ったコンビネーションから、手数を一発減らす! いいわね!」
「うん……厳守する」
「あの、ちょっといいですか?」
「はい。すみません、ご迷惑をかけて……」
「それはいいのですが、すこーしアドバイスなどさせて貰えれば……そうですね、ウルズさん。まずあなたの立ち回りは剣士のそれではない」
「……? え……?」
「あなたはモンスターの攻撃軌道を読んで、予めその軌道線上の外に身を置こうとしている。確かに安全かもしれないが、結果としてモンスターとの距離が離れてしまう」
「……」
 確かに、そういう意識で回避をしている。
「モンスターが攻撃してきた時には被弾しないかもしれないが、しかし攻撃へ転じるまでのラグがありすぎます。剣士の場合、その立ち回りだと本来は手数が出せない。なのに普通の片手剣並に攻撃をしてしまっている」
「それは……」
「だから、反撃を喰らう」
「さすがに上位ハンター。的確な指摘だニャ。しかしウルズは、もともとガンナー以下の防御力でやっていたから、そういう回避法が身に沁みついてしまっているんじゃないかと思うニャ」
「……ふむ……」
 モス卿は少し考え、私を見た。
「よろしい。ならば荒療治だ」
「あ……荒療治?」
「ええ。あなたは今回、攻撃には参加しなくていい」
 言われた言葉に、私の感情は一瞬、沸騰しかけた。

 お前は役立たずだ。そう宣言された気がした。

 どす黒い怒りが、私の中に満ちてくる。
 だがそれを表に出すことはない。感情を抑えこみ、無表情を決め込む。
「抜刀はしてください。しかし攻撃してはいけない。ただ、ウラガンキンの至近距離に張り付いて、ひたすら攻撃を躱すのです」
「それが……荒療治ですか……」
「不満ですか?」
「……いいえ……」
 大いに不満である。
 確かに今まで安全策をとっていたのかもしれないが、それでも攻撃をしなくていいなんて事は言われたことがない。
 非力かもしれないが、毒によるダメージだって確かに与えられるのに。
 私は、攻撃面でパーティの脚を引っ張りたくなかったのに。



07.
 私はやさぐれていた。
 再び対峙したウラガンキンに張り付き、常に敵の攻撃が当たる間合いで、剣を抜きながら、しかし決して手を出さずに立ちまわった。
 最初はそれでもおっかなびっくりだった。
 反射神経に頼っただけの回避。危なっかしいことこの上なかった。

 しばしばピンチに陥った。特に、顎の鉄槌が至近距離に炸裂した時、地面が揺れて思うように動けなくなる。
 だがそんな時は、だいたいロキかモス卿が私をふっ飛ばし危機を脱していた。
 もう少し穏便な方法は無いのかとも思ったが。

 続けるうちに、段々とウラガンキンの動きが見えるようになってきた。
 
 この予備動作をしたら、あの攻撃が来る。
 この挙動の場合は、ここらへんに居たら攻撃は当たらない。
 ガスを噴出させる。その時は距離を離す。
 回転突進の予兆が見えたらとにかく逃げる。
 
 このタイミングならばかわした後に攻撃を当てることが出来る、というシーンも多くなってきた。だが、私は頑なに攻撃することを避けた。
 火力での貢献などするもんか。そう思っていた。
 攻撃をかわす感覚がわかってくる。
 やけっぱちな気持ちになっていた私は、必要以上にギリギリまでウラガンキンを引き寄せるように動いた。

 以前の間合いでは、モンスターの全身を視界に入れて動きを見ていた。
 今は、距離が近すぎて瞬間瞬間ではモンスターの一部しか眼に入らない。動きを見ているだけでは予備動作がわかりにくい。
 その代わり、筋肉の動きや、息遣い、脚の微妙な位置取りなどがよく感じられる。
 私は、今まで感知したことのないそれらの動きまで見て取って、モンスターの動きを察知するようになっていた。

 ウラガンキンは明らかに苛立っていた。
 目の前に。いつでも触れられる距離に、小さな身体の私が居る。
 だが触れられない。ウザい。気になる。何もしてこないくせに、常に視界にちらつく。挑発するように動き回る。

 ウラガンキンがムキになればなるほど、その動きは大味に、隙の多い物になる。
 
 ウラガンキンが怒り狂い、口から黒煙を吐きながら私を目掛けて顎の鉄槌を振り下ろす。
 
 私は冷静にそれを見つめ、右腕に着けた盾でその顎に軽く触れながら身をひねってかわした。直後に来た地震のような衝撃は軽く後ろにジャンプして無効化する。
 渾身の一撃をいなされたウラガンキンは、怒り心頭といった感じで吼えた。

 見たか!
 
 危険な遊戯に挑戦し、成功させた子供のように、私のテンションは上がった。

 私がウラガンキンの眼の前でヒラヒラ動いている間、当然だがフレイアもモス卿も攻撃を加えていた。
 最初は彼らの動きを視界に入れる余裕などなかったが、慣れて来るにつれて意識することが出来るようになっていた。

 重量級武器を操る二人の攻撃は、ウラガンキンを覆う鎧のような鉱石を傷つけ、ひびを入れ、その体力を蝕んでいく。

 モス卿が剣と盾を合体させて巨大な斧とし、水平に二回転させて連続で斬りつける。
 武器に宿る、龍属性と呼ばれる謎のエネルギーが赤黒い稲光を発しウラガンキンに叩きつけられる。
 怯んだところに、フレイアがガンランスを担いで振り下ろす。その攻撃に耐えてフレイアを威嚇するウラガンキンだが、フレイアは武器を叩きつけた衝撃を利用して装填された弾を一気に砲撃する。
 その衝撃は凄まじく、ウラガンキンに付着した溶岩塊が吹き飛んだ。

 ついにウラガンキンは背を向けるようにして身体を丸め、転がりながら逃げた。
 
 そのスピードはさすがに走って追いつけるものではなかったが、しかし軌道自体はフラフラしているのがわかった。



08.
 ウラガンキンが去って、一段落ついて。
 命じられたとは言え、まったく攻撃せずにいたことをどう言われるか、私は少し不安になった。

 だが、そんな心配とは裏腹に、まずフレイアが私を褒めた。

「やるじゃない! お陰で助かったわ!」
「え? 助かった?」
「ウラガンキンのヘイトを集めていてくれたおかげで、随分と攻撃をしやすくなっていたのですよ」
 モス卿も武器を納めてそう言った。
「普通、根本から立ち回りを変えるとなるとかなりのストレスがかかります。最初からあれだけ動けるとは思っていませんでした」
「そ……それほどの事では……」
 私は少し照れくさくなって、そっぽを向いて二人から眼をそらした。
「お陰で出番がなかったニャ」
 ロキが苦笑いしながらそう言った。
「ウラガンキンももう瀕死のはずです。最後にちょっと楽しいことをしましょうか」
 そう言って、モス卿はブタ鼻を私のこめかみに押し当てた。耳打ちのつもりだったのだろう。

 彼は私に、ある攻撃法を教えてくれた。

 ロキが鼻をひくつかせてウラガンキンの匂いを追った。
 今回、これくらいしか出番がないニャ、と笑っていたロキだが、本気で気にしていたのかもしれない。彼が必死に索敵をする姿を、私はかつて見たことがなかった。

 ウラガンキンは、火山の最奥で一心不乱に岩石を食べていた。
 体力回復を図っているのだろうが、隙だらけである。それだけ生き延びるのに必死なのかもしれない。
 だが、私たちはそれを狩るのが仕事なのだ。

 準備を整え、一気に襲いかかった。

 ウラガンキンは、フレイアとモス卿の攻撃に耐えながら、食事を続ける。だが、それも限度があった。
 攻撃を受けたウラガンキンは、全身を揺さぶり始めた。
「ガスが来る!」
 攻撃をしていない私が最初にその予兆に気付き、注意を促す。

 鉱石を食べるウラガンキンが、それを分解吸収する過程で体内にガスが貯まる。その排出を兼ねた攻撃だとモス卿は言っていた。
 ガスは有毒で、吸い込めばハンターですら意識を失う。
 私はその範囲外に離れたが、二人はその盾を構え、息を止めて睡眠性のガスをやり過ごした。

 ガスが霧散したことを確認して、私はウラガンキンの目の前に躍り出る。
 小突くような顎の一撃をかわす。
 ウラガンキンの動きはほとんど完全に身体が覚えた。ここから僅かな間は一方的に攻撃できるタイミングだ。

 私はさっきモス卿にレクチャーされた攻撃の動作に入った。
 
 前方に鋭くダッシュしながら、左手に持った剣で切りつけ、その反動を利用して一挙動で右腕の盾で打撃を加える。
 硬い顎に当たったが、体中の力を込めた盾での打撃だ。弾かれることはない。 
 盾を振り下ろしたことで重心が下がるが、それは上に跳ぶための溜めになる。
 私は盾を頭にかざしながら、押し縮められたバネが開放されるかのような勢いでジャンプしウラガンキンの顎に体当たりをした。

 モス卿に教わった片手剣の狩技、昇竜撃。
 
 かつてない手応えを覚えた。
 モス卿やフレイアの攻撃ですでにひびが入っていたウラガンキンの顎が、私の体ごとぶつかる盾の打撃で砕けた。
 その感触は心地よかった。
 私が着地した数瞬の後。
 ウラガンキンの巨体が、ドウという地響きとともに大地に転がった。

「よく出来ましたァ!!」

 叫びながら、昏倒したウラガンキンの顔面に、モス卿が斧を背負い投げるように垂直に振り下ろす。
 強烈な斬撃と、チャージされていたエネルギーをすべて開放し爆発を引き起こす、「超高出力属性開放斬り」。
 ガンランスの竜撃砲をすら凌駕する必殺の攻撃を、砕けてしまった顎に受け、ウラガンキンは完全に沈黙した。
「狩った。ヴィクトリー」
 爆発と閃光により巻き上がった砂煙の中、モス卿がこちらに向けてVサインをしていた。



09.
 帰りのキャラバンは鉱石で一杯となるため、私たちは一台のガーグァ車をチャーターして集会所に戻った。
 
 受付でメインクエスト達成の手続きを終え、屋外の屋台フードコートで祝杯を上げていた。
 
 モス卿は、モスSフェイクの上から器用に飲食をする。
 まるで本当にあの装備が素顔なんじゃないかと思えてきた。
 もっとも、だとしたらそれは取り外すことの出来ない呪われた装備としか言いようがないが。
 いや、通常の人間であれば呪いだが、モス卿にとっては祝福なのか?

 モスポークのアヒージョを食べながら、モス卿は私に対して言った。
「ウルズさんに必要だったのは、攻防一体の立ち回りでした。回避のための回避が、今までの経験で染み付いてしまっていたようですが、剣士はそれではだめなのです」
 モス卿は続ける。
 私は美味しいものを食べている時は出来ればそれに集中したいのだが、実際に役に立つアドバイスを貰っていた以上、付き合わざるを得ない。
「回避は攻撃のためにするもの。それを身体で覚えなければいけません。フレイアさんが基礎がなっていないという評価をしていたのはそのためでしょうが、しかしフレイアさんもまだ若くて未熟。自分では出来ていても、どう伝えていいのかわからなかったのでしょう?」
 話を振られて、フレイアは無言で頷いた。
 一応聞いているが、おそらく頭の中はモス卿の素顔をどうやって見るか、そのことで一杯のようだ。
「剣士の狩りの第一義は回避です。ただし回避するための回避ではいけません。攻撃につなげるための回避が重要なのです。それを可能にするのはまずは経験。その経験を積むためには、モンスターの動きをとにかくひたすらよく見ることなんです」
 私は、モス卿おすすめのモスポークの酢味噌和えをパクつきながら頷いた。
 今回の経験で、それはよく理解できた。
「これは頭に叩き込んでおきなさい。必ず忘れますから。ただスランプになった時には思い出しましょう。ウルズさん、あなたは別に筋は悪くない。今まで誰にも教わらずに、大きな怪我もなく動けてきたというのですから、少し自信を持ちましょう」

 ……
 …………

 ウルズのあずかり知らぬ事ではあるが。

 この時、モス卿は内心で考えていたことがある。

 ウルズが身につけていた回避。
 モンスターの攻撃軌道を予測し、予めその軌道線上の外に身を置いておくという回避意識は、間合いの問題があるため剣士には適さない。
 しかし。
 遠くから反撃できるガンナーならばむしろ基本のような立ち回りであり、またウルズの攻撃力にこだわる性格を考えるに、むしろ近接手数武器よりも向いている武器種があるのではないか。
 とは言え、今はまだ複数の武器を扱うべき時ではないだろう。
 いつか自分で気づくか。
 あるいは、この娘が経験を積んだ後に再会することがあれば、その時にまた話しましょうか。

 ……
 …………

「モス卿は、なんで……」
「ん? なんでしょう?」
「なんでそんなに親切にしてくれたんですか?」
 今回の狩猟で受けたアドバイスや練習法に、素直な感謝の念を抱いている。
 人の裏側ばかりを気にする私にしては珍しいと言わざるを得ない。
 だがそもそも私がモス卿の立場だっとしても、わざわざ下位ハンターの狩猟の手伝いに行くことなど無いだろうし、ましてやフレイアではなく私の方にアドバイスをすることなどあり得ない。
 そんな無駄なことをする、その気持ちが、私にはわからない。
 だから聞いてみた。
「今まで、狩猟の手を休めて立ち回りを教えてくれる人なんて居なかった……」
「それはですね」
 モス卿は笑いながら言った。
「お兄さんが優しい性格で、かつ余裕があるからです。余裕。これ大事」

 余裕。

 その言葉を聞いて、私は少し反発心を持った。私とは無縁の言葉だった。綺麗事だと反射的に感じてしまう。
 余裕がある。ただそれだけで赤の他人に対して親切に……それも自分の時間と労力を費やせるほどの事が出来るものだろうか。
 だが、ふと思う。
 本当に余裕があるというのは、そういうことなのかもしれない。

 人間なんて、自分の欲望のために、他人を犠牲にするものだ。

 今まで自分が関わってきた大人たちは皆そうだった。いや、皆が皆、犠牲にするとまでは行かないが、それでも自分に必要がなければ切り捨てる。離れる。
 それは至極当然で、それこそが世界の実情だと思っていた……いや思っている。
 だが、それを唯一の真実であると認識すると、自分もそうなってしまうのではないか?
 それこそ、私が心から憎む伯母やあのクソヤロウと同じ種類の人間になってしまうのではないだろうか?

 今、私は自分のことすらちゃんどできていない。
 しかし。
 綺麗事でもいいから、いつかは他人を手伝えるような、導けるような、余裕のある人間を目標とするべきなのかもしれない。

 モスポークを食べる手を止めて、私はそんなことを考えていた。

「さすがは上位ハンターというか……簡単に言うニャア」
 横で聞いていたロキが言った。
「余裕を持つなんて、このご時世、難しいと思うがニャ」
「意識の問題でしょうね。自分には余裕があると思えば、それは余裕があるということなんですよ」
 モス卿は静かにそう答えていた。



10.
 食事を終えた。
 モス卿がオススメするモスポークの酢味噌和えは確かに美味しかった。
 寄生先で携帯食料を独占して、それで食いつないでいるところから始まった私の狩猟生活だが、自分のお金でこれが食べられるようになったと考えると、これでも色々と「余裕」は出てきているのかもしれない。

 そう言えば最近、あの飯屋に行っていない。
 私はふと思った。
 
 私のような底辺層のハンター向けに、普通ならば捨てられてしまうモンスターの内蔵を料理して安く提供している飯屋。
 店を出している場所が、普通に暮らしている人から見れば足を踏み入れたくはないだろう、衛生面でも治安面でも問題のある地域だったし、今思えば別に美味しいものだったわけでもない。
 そういうところに出入りしていたと言うことは、フレイアたちには知られたくないとすら思っている。
 しかし、食事のために金を使うということは自分にとってはちょっとした贅沢だったし、ガッツを養うには良い環境だった……のか? いや、底辺を這いずっている他のハンターに影響されて、上昇しようとする意識が育たない場所だったかも……。
 だが、あれはあれで独特の文化があった。今度久しぶりに行ってみようか。もちろん一人で。

 私が美味しいものを食べた余韻に浸りながらそんな事を考えていると、フレイアが炒め物に入っていたキノコを子モスにちらつかせているのに気がついた。

 子モスはフレイアの手から、そのキノコを食べる。
 キノコと見れば一心不乱になってしまうのは非常にモスらしい姿ではあった。

 フレイアはキノコでおびき寄せた子モスを抱え上げると、ニヤリと笑いながらモス卿に言った。
「素顔を見せてくれないなら、この子をモスジャーキーにして食べちゃいますよ」

 ……冗談なのはわかっているが、最悪だこの人……。
 そんなことを考えた次の瞬間。

 髪の毛が逆立った。

 モンスターに発見された時のような、生命の危機を感じた際の本能的な恐怖感。

 恐る恐る振り向くと、そこには圧倒的な威圧感を放っているモス卿の姿があった。
 姿形は、ただのモスS一式を着ている男性ハンターのまま。
 しかし、周囲の空間が歪んでいるのではないかと思えるほどの、異様な殺気が彼を取り巻いている。

「やれるものならば、殺ってご覧なさい。しかしあなた……覚悟して来ている人ですよね? モスを殺ろうとするって事は、逆にモスに殺られるかもしれないという覚悟を……」

 静かだが、迫力のあるモス卿の言葉に、私は冷や汗が吹き出てきた。
 フレイアに「謝りなさい」と言いたいのだが、場の緊張に言葉すら出せない。

 動くということを感づかれたくない、というよく分からない本能が働き、ごくゆっくりとフレイアの方に視線を戻す。
 フレイアは気を当てられたようになっていて、力なく子モスを離していた。
 子モスは何事もなかったかのようにキノコを食べ終わると、フレイアの手を一舐めして、トコトコと歩きながらモス卿の元に戻った。
 モス卿は子モスを抱きかかえて言った。
「もちろん、冗談だということはわかっていますよ」
 空気を震わせるような殺気が、いつの間にか、ウソのように消え去っていた。

 しばらく歓談した後、モス卿は帰っていった。
 あの一瞬が、まるで無かったかのように彼は振る舞っていたが、私たちは最後までギクシャクしてしまった。ロキですら普段の飄々とした態度を取ることが出来ず、動揺しているのがわかった。

 モス卿が帰った後、私達も帰ろうか、と促したが、フレイアにちょっと待ってと言われた。
「まだ何か食べる?」
「……立ち上がれないのよ……」
「……そっか……」
 私はフレイアを置いてクレープ屋台に行き、二枚注文した。
 テーブルに戻ると、一枚をフレイアに差し出し、私は言った。
「とりあえず、甘いものを食べて落ち着きましょう」
 生まれて初めて、私は他人に奢るという行為をした。
 小さい一歩だが、こうやって「余裕がある」と思うことにしよう。
 いつか、本当の余裕を持つために。



11.
 しばらく後。

 共に狩りから帰った私に、フレイアが言った。
「基礎がかなりしっかりしてきたわ。随分と安定してきた」
「ありがとう。モス卿から教わった心構えが的確だったから……」
「モス卿かぁ、あれから会っていないけど、何をしてるんだろう?」

 あの日以来、集会所でモス卿を見かけなくなった。
 別に威嚇してしまったから会いにくいというわけでもないと思うのだが、どうしているのかは私も気になっていた。

 狩猟が完了したことを報告するため受付に行くと、機械仕掛けの人形のような、美しいが感情をあまり出さない受付嬢が、私達を待っていたと言った。
「メッセージを受け取っています」
 渡された書類の発行主はモス卿だった。

   ハロー、私です。
   ちょっと遠くの地域からクエストの依頼をされたので、そちらを離れることになりました。
   せっかく美少女たちと仲良くなれたのに残念。
   今の案件を終えたら戻るので、その時にはまた一狩り行きましょうね。


 私たちは、いつもの屋外フードコートでおやつを食べながらモス卿について話していた。
「上位ハンターともなると、クエストを直接依頼されることもあるんだね」
「あなたは素直ねウルズ。G級ハンターならともかく、そんな事はまずありえないわよ。素顔を見せたくないから逃げたと、私は見るわ」 
 G級ハンター……噂では上位の更に上にあるハンターランクの呼称で、その実力は単騎で古龍をも狩るというハンターの事だ。まあ確かにそんな人ならば依頼も殺到するだろうが、実際に会ったという人を私は見たことがない。ほとんど伝説上の存在と言っていい。
「随分とひねくれた事を言うニャ」
 ロキが呆れたように言った。
「流石に懲りたかニャ。興味本位で怒りを買って……あれは本気でコワかったニャ」
「まあ仕方がないわね。しばらくは諦めるわ」
「興味を持ったものを諦めるとは珍しいニャ。だが、それがいいニャ。ちょっとは大人にニャったか……いや……しばらく……?」
「今の私の実力では、彼のモスフェイクを引っ剥がすのは無理。それは認める」
 フレイアは決意を固めるような表情で宣言した。
「だから、私達も上位ハンターへの昇格を目指すの。それだけの実力を身に付けるのよ」
 決して大きな声ではない、静かに、しかし力強く言うその言葉に、意志の強さが感じられた。

 上位ハンターは誰でもなれるものではない。
 むしろハンターの中でも数少ない、選ばれたエリートである。
 フレイアはそれを目指すと言う。
 
 モスフェイクを引っ剥がすために。

「まあ……頑張って……」
 私は呆れて……フレイアが本気であるという事に呆れて、そう言った。
 すると、フレイアが不思議そうな表情でこっちを見た。
「何を言っているのウルズ」
 ん? 
「あなたも目指すのよ。当たり前じゃない」
 巻き込む気か……。確かにただ上位になっただけでは、モス卿の上を行くことにはならない。二人いたらそれだけモスフェイクを引っ剥がしやすくはなるだろうが……。
 いや、しかし……
「そうだな。それもいいかもしれない」
「フレイア、それは無茶ぶりニャ……って、ウルズ、お前も随分と素直に受けるニャ!?」
「ロキ、前にフレイアが言ったじゃないか。上を見て、上を目指して自分に投資することで闘志を燃やせって」
 私はフレイアとロキを正面から見た。
「下を向いてしまっては、私の大嫌いな人たちと、同じ世界の同じ人種になってしまうかもしれない。モス卿と話していてそんなことを考えたんだ。そして、それだけは絶対に嫌だと思った」


……

 ウルズには知る由のないことだったが。
「自分の大嫌いな人たち……」という言葉を発したときの彼女の表情は、本人が制御できず、無意識のうちにあからさまな嫌悪の感情が浮かんでおり、フレイアとロキはそれを見てギクリとした。
 普段、努めて感情を外に出さないウルズにしては珍しかったし、本人がそれに気づいていないらしいというのも、彼女たちにとっては異様な感じがした。


……

 私は、改めてフレイアとロキを見やった。
「どうしたの黙っちゃって? 私も上位を目指すってのは、そんなに意外だった?」
 なぜだか分からないが、ちょっと引いている? そりゃ底辺ハンターの私では誇大妄想に近い話なのかもしれないが、振ってきたのはそっちじゃないか。
「いや……お前がポジティブに話に乗ってきたのでびっくりしただけニャ」
「……ウルズ、あなたの嫌いな人って……いや、ごめん。なんでもないわ。なんにせよ、上位昇格なんてすぐにどうこう出来るわけじゃないし。今は地道に実績を積むしか無いわね」
「狩猟、狩猟の日々になるかな」
「それも多分、年単位でね」

 この日。
 私たちには一つの目標が出来たのだった。
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category: モンハン小説

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コメント

毎週金曜日とくれば♪

FRIDAYかΣ( ̄□ ̄)!(笑)



後編も楽しく読ませていただきました♪



モス卿の殺気コワス(;´д⊂)



でもワロタ(≧∀≦)



攻撃の為の回避ですか・・・


耳が痛い・・・



ヘタレは前進制圧特攻あるのみですからね・・・



結果被弾しまくりで乙祭り・・・



攻撃が最大の防御になるのが凄腕ハンター、ならないのがヘタレクオリティ・・・



勿論、自分は後者です(^^ゞ



ロキさんのモンハン小説が完結するまでにはヘタレ脱却出来れば良いのですが・・・



来週もFRIDAY楽しみにしてますよ(笑)(^-^)/

けんゆう #028lExxE | URL | 2016/08/13 13:17 | edit

モス卿ってまさか・・・とわたしです

ウルズちゃんの立ち回りってガンナーのものだったんですね。ヘビボより弓とか似合いそう。

そしてさらっと回避オンリーをさせて、撃っていいのは・・・と言わんばかりのモス卿ステキやん?
腰が抜けてるフレイアさんprpr

個人依頼はG級ハンターへ・・・

別地方ではハンターカードリセット、バルバレ、モスフェイク・・・うっ、頭が

カンペ #- | URL | 2016/08/13 20:18 | edit

Re: 毎週金曜日とくれば♪

>>けんゆうさん

金曜日なのは、モンハン小説を再開させた最初が金曜日だったからという、ただそれだけのものだったりします。
いま確認してみたら、ここまではそれほど金曜にアップしていたわけじゃなかった……。
なんだろう、自分の中の「ちゃんとやってた感」。

とりあえず、ヘイムダルさん編を終えるまで金曜日にアップを守っていきたいと思っています。

それにしても。
攻撃が最大の防御になる人って、やっぱり怯み値とか完全に計算しているんでしょうね……。
被弾しながら立ちまわるだけでもイッパイイッパイの自分にとっては、もう未知の領域です。

そういえば以前、「【MHP2G実況】G級をライトボウガンで一周ひとり旅」という動画で、睡眠までの弾数とかを解説しながら実況していた女性プレイヤーが居ましたが。
頭いいんだろうな……ああいう人って。

でもまあ。
鬼ぃさんなら出来る出来る!
なぜって、自分の小説が完結するまでには、たぶん相当長い時間がかかるから!
時間的余裕はいっぱいあるから!

ロキ #- | URL | 2016/08/14 09:47 | edit

Re: タイトルなし

>>モ……カンペさん

ガンナーの立ち回りをしていたというか、守備力があまりにも低かったので自然とガンナー的な動きになっていたというか。
でも使っている武器は片手剣なので、かなり中途半端な立ち回りになっていたはずです。

キャラ設定として、結構な破壊衝動を眠らせている娘なので、手数を出しづらい状況はそれなりにストレスだったかもしれません。

ちなみに。
最終的にはヘビィメイン、片手剣サブというのは前から決めていました。
何故なら、ウルズの見た目のモデルとしたデフォ子先生にヘビィボウガンをもたせていたから。

さらにちなむと。
デフォ子先生にヘビィを持たせたのは、デフォ子=RPG7のイメージがあるから。

さらにさらにちなむと。
デフォ子がRPG7を持っているのって、MMDに物理演算エンジンが実装された時、それを検証するため……いやそれで遊ぶために、MMDerの一人が物理演算エンジンを使用したRPG7の発射や、それを活用しての「だるま落とし」をデフォ子にさせていたからだったりします。

MMDに物理演算エンジンが実装されたから、ウルズがヘビィを(将来的に)持つことになる。
井上織姫の買ったネギとバナナと羊羹が無事だったから、初音ミクがネギを振ることになる。
そりゃ桶屋もウハウハですね。

回避オンリーの鍛錬法は、彼なりし亜の刻、亜なりし彼の地にて話されていたアドバイスを参考にさせていただきました。
まさにモス卿の教え。
自分は実践していませんが……。

そして。
イケイケな女の子が、腰を抜かしてしまっている絵。
優雅に隠そうとしているけど、さすがに誤魔化せなくなってしまった状況。
萌える! なんか萌える!!

自分で自分の新しい扉を開いた気がしました(いや、こういうシチュエーション、探せば色々ありそうだけど)。

ロキ #- | URL | 2016/08/14 10:08 | edit

あぁ成程・・・

最初に見たデフォ子さんは確かヘビィボウガンを担いでいたハズ。
しかしウルズが担いでいるのは片手剣。
なんでかなーと思っていたけれど。モス卿の独白で納得。
いつか自分で気付くのか。誰かに勧められるのか。
後にヘビィボウガン使いになるってフラグかな?カホウとか担いで。w

それはさておき。
ウラガンキン編完結、お疲れ様です。

モスSフェイクを引っ剥がす為に上位ハンターを目指す決意を固めるフレイアさん。
いや、勿論、それだけが動機じゃないだろうけど・・・実際、一体何割ぐらいなんだろう・・・?
ウルズの与太譚に真剣に聞き入ったり、いたずら好きの割には結構単純というか、純粋と言うか。
まぁそんなところが可愛いのですが。

ウルズは確か、軽い男性恐怖症だったハズ・・・だけど、モス卿は該当してないみたいですね・・・。
普通に頭撫でられてたり、自分から質問していたり。
まぁ彼の場合、人じゃなくてモスですからね。

直接依頼が来るのはG級ハンタークラス。
ゲームでは毎度、HR1のスタートだけど。
小説とかのハンター世界だとどうなんだろう?
各地にギルドが存在、ハンターは基本、何処かしらのギルドに所属しているようだけど。
拠点を移動と共に、所属ギルドを変えたりするのだろうか?
その場合、HR1扱いになるとか??
その地域での狩りに慣れるとか、乱獲を防ぐとかの意味で。
モス卿も、何処か遠く離れた地では、G級ハンターなのかもしれませんね!

とりあえず、モス卿の再登場に期待。

yuki #Z0eBfVjg | URL | 2016/08/14 10:13 | edit

Re: あぁ成程・・・

>>yukiさん

ウルズが最初からヘビィを担いでいないのは。
鍛冶屋組合主催の武器の展示会場でカホウを見つけた時。
初めてドラゴン殺しを見た時のガッツばりに「人が悪いぜフレイア……あるじゃねぇか、もっとオレの戦向きのやつが!」
と、言わせるため……
……
…………ではなく。

砥石を買うことすら出来なかった娘が、最初からヘビィは出費的な意味で無理だろう、と思ったからだったりします。

で、基本の片手剣から始めさせたわけなのですが。
そしたらこの娘、なんか剣士用の装備とか苦労しながら作り始めちゃって……。
すぐに持ち変えさせるわけには行かなくなっていったという……。

ウルズは、実はモス卿も少し警戒していたのですが、しかしあの見た目。
なんか男性であるという実感があまりわかなかった……という設定。というか言い訳。
まぁ彼の場合は、人じゃなくてモスですからねぇ。

自分の中で、この世界のギルドは、中央の組織がかなり広域をカバーしていて、その中に幾つかの集会所がある、というイメージです。ウルズは色々な集会所を廻っていたとはいえ、それは同じ組織が管理している支店のようなもの。
ウルズたちが定宿にしている集会所も、所属ギルドの中央本店ではなく、ちょっと大きい地方の支店のようなイメージです。

別の大陸に行けばまた別のギルドがあるはずですが、とりあえずウルズたちの話は一つのハンターギルド組織の中で展開していく予定です。別のギルドは話でしか出てこない感じ。

モス卿が集会所を離れたのは、話の都合上……いや、多分本当に個人的に依頼されたから?
依頼主はモス愛護協会会長あたり?

なんだかんだ言ってゲストキャラなので、レギュラーではないんですよね……。

次は、ローゲ君を出す予定。
アイルーではなくメラルーですが、ニャンターを目指していたりします。
かなりのひねくれ者です。

ロキ #- | URL | 2016/08/14 11:22 | edit

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