モンハンブログ 週末の笛吹き

主にMH3GとMH4、MH4Gそしてモンスターハンタークロスのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。

モンハン小説未来編 第四話 「ウルズとフレイア、モス卿と出会う 前編」 

新たに装備を作ったウルズ達の前に現れた、モス卿と名乗る謎の上位ハンター。
モデルは、この界隈で有名なあの方ですが、自分の脳内ではかなり分離され、独自の動きをしてくれるようになってきました。

今回は、ウラガンキンの討伐。
モス卿が持ち込むのはチャージアックス。
ガードポイントも使いこなしています。

後編も近いうちに上げたいと思っています。


物欲大社へお賽銭をあげる ミ⑤



00.
前回のあらすじ

 ぼっちの寄生ハンターだったウルズが、フレンドとなったフレイアの薦めでパピメル装備一式を、苦労しながら作成。
 次はどのクエストに行こうかと、幾つかの屋台が並ぶ屋外フードコートで相談していると、そこにモス一式装備の男性が混ざってきた。
 モス卿と呼ばれるその男性は、候補としていたウラガンキンの狩猟を手伝おうと言う。
 装備に関して突っ込まれても、モス一式は決して脱がないと宣言する彼を、ウルズとフレイア、そしてオトモのロキは不審の眼で見るが、提示されたギルドカードに記されている彼のハンターランクを知り驚愕する。
 モス卿のハンターランクは6。
 ハンターの中でも一握りのものしか達し得ない上位ランク。
 結局、二人と一匹は、なし崩し的にウラガンキンを一緒に狩りに行くことになったのだった。


01.
 私たちは完全に気を飲まれていた。
 ハンターにはランクというものがあり、それは狩猟実績やギルドへの貢献度などから総合的に判断され、ギルドによって認定される。
 ハンターのほとんどはランク1〜3。
 4以上になると「上位ハンター」と呼ばれるのだが、そこに達するのはほんの一握り。
 それが6ともなると、駆け出しの私からみるとほとんど雲の上の存在である。
 ちなみに、私はハンターランク1。フレイアは3である。
 まだ二十歳になっていない年齢でのハンターランク3はかなり優秀で、フレイアの筋の良さ、師匠の存在など、私のコンプレックスを刺激するものがある。だから普段はランクのことは考えないようにしている。

 その高レベルなギルドカードに絶句していた私達だったが、最初に衝撃から脱したロキがモス卿に話しかけた。
「随分と高いハンターランクにゃが、フレイアたちを手伝って、あんたにどんな得があるニャ?」
「それにその装備は一体……?」
 フレイアもモスS一式について質問するが、表情はまだ少し引きつっている。とりあえず私は警戒し、黙っていた。
 ハンターランクはハンターとしての実績を証明するものではあるが、決してその人格まで認めるものではない。むしろその域にまで達するハンターにはどこか普通ではなく、人間性に難がある者も多いという。
 実際に、私を伯母から買ったクソヤロウも、ムカつくことに上位ハンターだった。ここまでランクは高くなかったはずだが。

 ああ、思い出しただけで吐き気がする。

「自分はモス好きのお兄さんであり、強く優しいので困っているお嬢さんたちを放っておけないのですよ」
 モス卿は、額に甲殻の着いたブタの顔にしか見えないモスSフェイクの中から、意外なほど爽やかな声で答える。
 私は、ほんの少しだけ警戒を緩めた。
 声が良かったからではない。下心を隠そうとしていないからだ。
 目的が私達……というよりも、フレイアだろうが、そこに良い格好をしたいというのであれば、声をかけた動機としてわかりやすい。
 モス卿は続ける。
「なぜモス装備なのかというお嬢さんの質問は、愚問としか言いようがありませんね。世の中にこれほど愛らしい装備は他に無いじゃないですか!」
 予想の斜め上を行くモス卿の言葉に、私たちはかなり引いた。
 やはり上位ハンターに至る者は、精神的にどっかイッてしまっているようだ。
 
 顔の引きつりを懸命に抑えていると、ふと私は足元に気配を感じ、テーブルの下を覗き込んだ。
 そこには小さな子モスがいた。
 顔を上げてモス卿と見比べる。
 まあ、どう考えても関係者だろう。おそらくはペットか。
 私は椅子を引いてその子モスを抱き上げた。
 額は硬くトゲトゲした甲殻に覆われ、背中には申し訳程度に苔が生えた子豚のような姿で、お世辞にも可愛いとは言えない。
 しかし、私の手の中で逃げようともがきながら抵抗する姿は、不覚にも愛らしいと思ってしまった。
「この子は……」
「おお、その子が人になつくとは珍しい」
 なつく? 結構な抵抗をしているが?
「その子はモスのモス。私の相棒の一人です」
「は……はぁ……」
「あ、こっちにも!」
 フレイアが声を上げる。顔を向けると、フレイアの足元には子モスよりもずっと大きい、一抱えほどあるプーギーが一匹いた。
 大人のプーギーとしては普通なのだが、子モスが小さいためにかなり大きく感じる。ちなみに、一般的にあまり出回っていない「モスのきもち」と呼ばれる服を着せられていた。
「かわいー」
 フレイアが席を立ち、プーギーの前にしゃがみこんで頭をなで始める。
 しかし。
「痛いっ!」
 プーギーは見た目以上に素早い動きでフレイアの手を噛んだ。油断していたとは言え、ハンターに攻撃を加えるあたり、かなりの猛者である。
「ああ、その子は気性が荒くて。ごめんなさい。……ほら、おいで」
 モス卿が手招きすると、プーギーはフレイアに対してツンと顔をそむけてモス卿の足元に歩いていく。私も子モスを地面に下ろすと、こちらは一目散にモス卿のもとに駆け出し、その後ろに隠れてしまった。
「すみませんね。モスはともかく、プーギーは人嫌いで、私以外には懐かないのですよ」
 フレイアは、手を抑えながら、お気にせずに、とだけ答えた。口数が少ないのは、小動物から攻撃されたのがちょっとショックだったのかもしれない。

「さてでは、食事をしてから受付へ行きましょうか。ん? 何しにって、受けるんでしょう? ウラガンキンの狩猟クエスト。確か今、ガンキン主任の討伐依頼もあったはずです」
 言いながら、屋台に立っている職人気質の料理アイルーに手を上げて、大声で注文をした。
「シェフ! モスポークの酢味噌和えを!」
 私達二人と一匹は衝撃とともに顔を見合わせた。
 ……食べるんだ……モスの肉……
「ん? どうしました。皆さんはもう昼はお済みで? まだなら、おすすめですよ。モスは酢味噌和えに限ります」
 モス卿はキョトンとした表情(だと思う)で、私たちに語りかけていた。

 その後、受付に行くと。
 機械じかけの人形のような、美しいが感情をほとんど表に出さない受付嬢が、普段よりも少しだけ眼を見開いて、モス卿の依頼を受けていた。そのていどの表情変化しかなかったのは流石だと思った。
 


02.
 次の日。
 私たちは火山へと行く鉱石輸送車群、通称を火山キャラバンという一隊に便乗して出発した。
 三頭引き、四頭引きといった巨大な鉱石輸送車を中心に編成されたキャラバンで、隊長や御者、鉱石を取り扱う商社の人間やギルドの人員の他に、補充や入れ替え人員となる炭鉱夫たちが十数人。そして私達になる。
 炭鉱夫や我々ハンターは、行きには空となっている鉱石輸送車に詰め込まれる。
 今回はスペースに余裕があるため、ハンターは炭鉱夫とは分けられて一車まるまるを割り与えられた。さすがに鉱石を載せる貨車だけあって頑丈そうだったが、居住性を考えられた作りではないので快適とは言えなかった。
 
 モス卿は宣言通り、モスS一式のままでやってきた。
 持ち込んだ装備はチャージアックス「鋏刃斧ロワーガ」。パピメル装備にも使ったオオクワアゲハや重甲虫ゲネル・セルタスの素材、そしていにしえの竜骨などから作られている。
 片手で扱う剣と盾という片手剣にも似た構成だが、どちらも大きさが段違いの重量級武器であり、二つを合体させることにより斧としても使用できるという特徴を持つ。
 攻撃力、防御力に優れ、多彩な立ち回りを可能にする武器種だが、その分扱いが難しく、使い手は少ない。
 昆虫のアゴのように二股に別れた剣は、磨き上げられてはいるが、同時に使い込まれた風格もある。上位ハンターの持つ武器としてのオーラが漂っているかのようだった。

 フレイアが、モス卿のとなりで自分の武器であるホワイトガンランスの手入れをしながら話しだした。
「そのモスSフェイクは取らないんですか?」
 モス卿はちらりとフレイアを見る。
「一緒に狩りをするのですから、親睦を深めるためにも素顔で話したいと思うのですが……」
 それっぽいことを言っているが、彼女のことだ、どうせモス卿の顔が見たいという好奇心が抑えきれなくなってきただけの話だろう。
 モス卿ははぐらかすように言った。
「私もモス愛護団体の会員であり、在野の身とは言えモスの研究者。モスの気持ちを知るために、モスになりきって大自然に身を委ねる必要があるのですよ」
 それを聞いたフレイアは、笑っているような、しかし何かを企んでいるような、独特の表情を見せた。
 見ていたロキが、呆れたような顔で私を見た。
 私もその表情は見たことがあった。
 
 初めてフレイアと会話した時。私に興味が出たと言ったときの顔だ。

「じゃあ単刀直入に言います。素顔を見せてください」
 フレイアは誰もが愛したくなるような満点の笑顔を浮かべて、しかしかなり図々しいことを言い出した。
「気になるじゃないですか!」
「うーん、そうは言いますがねフレイアさん。これはそもそも私の素顔であって、中の人なんていないのです。あなただって、顔の皮を剥いで、真の素顔である頭蓋骨を見せてくれ、なんて言われたら嫌でしょう?」
 よくわからない理由で拒絶されたが、フレイアは上目遣いでモス卿を見つめた。
 女性の私ですら可愛いと思うし、同時にあざといと思う仕草だった。これが男性ならば、信念を曲げてでも素顔の一つや二つ、見せてしまいそうな気がする。頭の皮を剥ぐわけではないんだし。単にモスSフェイクを脱ぐだけなんだし。
 しかしモス卿はフレイアの媚態をあっさりとかわして、武器の手入れに戻った。
 フレイアはしばらくモス卿の方に秋波を送っていたが、完全に無視されてしまいさすがに諦めたらしく、再び分解整備されていたガンランスの組み立てに戻った。

 二人の武器に比べて、私の愛用する片手剣「ポイズンタバール」は、変形したり、砲撃したりするような複雑な機構はない。研ぎ上げて毒を塗布すれば手入れは終わりである。
 私は両刃の手斧のような形をした剣を、毒を刃に定着させるためにケースに入れて整備を完了した。
 ふと二人を見る。
 さすがに複雑な武器を扱うため、二人とも整備に関しては真剣で、特にモス卿はいくつもの整備手順を淀みなく行っていた。そのムダの無さはまさに職人技で、「狩猟は狩場につく前から始まっている」という言葉を体現しているようだった。

 私がモス卿の手際に見入っていると、視線を感じた。
 フレイアが、モス卿には気づかれないように無言で、しかし小さなジェスチャーを交えて私にアクションをかけてきていた。
 言いたいことはだいたいわかる。
 ワタシガモスキョウノカメンヲトルカラ、チョットキヲヒイテ、イシキヲソラシテ
 人の顔色を読むことに関しては、それこそ上位クラスの私である。ましてや付き合いが深くなりつつあるフレイアだ。言葉で言われる以上に理解できてしまった。

 子モスが近づいてきて、あぐらをかいている私の膝に手をかけた。
 危なっかしい動きで登ろうとするその子を持ち上げて太ももの上に乗せると、私は小さくため息をつき、しかし少し気を引き締め、場の全員に対して話すように語り始めた。

 フレイアの指示に従った理由は。
 なんのことはない。私もモス卿の仮面の下が気になったからだった。




03.
 今行くところとは違う炭鉱だけど、私もこの間まで炭鉱婦をしていました。
 そこで聞いた話なのだけど。

 少し暗い雰囲気を意識しながら話し始める。
 
 なんでウラガンキンが「主任」と呼ばれるか、知ってる?

 それまで武器の整備をしていたモス卿の手が、わずかに動くスピードを緩めた。
 話を聞いていると判断して、私は続けた。

 炭鉱婦の仕事は、とにかく単純な採掘作業が殆どで、ただ延々とピッケルを振るうのがほとんどなんだ。
 単調な作業って、最初は気が狂うようなストレスがあるのだけど、人間って不思議なもので、時間がたつとそれはそれで慣れてしまう。
 でも。
 それを長年続けていると……。

 あえて間を持たせて、フレイアの方を見る。
 じっとこっちの話を聞いていた。
 いや、あんたが私の話に気を惹かれてどうするんだ?

 やめるわけにもいかないので、私は続けた。

 長い間炭鉱夫を続けていると、やがてその身体が採掘をするためのものに特化していくのだそうだ。
 私も、溶岩の照り返しに肌が焼けて多少の熱を浴びてもヒリヒリしなくなったし、ピッケルを降るための筋肉もついた。
 精神的にも、単調な作業に耐性が出来て、ピッケルを振りながら別のことを考えられるようになった。

 それくらいなら、別に不思議でもなんでもないのだけど。
 ハンターの身体は、さらに環境に順応していくらしいんだ。

 熱に負けないように肌は硬化し、ついにはマグマに入っても平気なほどになる。
 いつでも腹を満たせるように、鉱石から栄養を吸収できるよう内臓が変化する。
 やがてはピッケルが無くても採掘出来るように、身体自体が岩石を割るためのものに特化していく。全身が岩よりも固くなり、力を込めるためにどんどん巨大化していくんだ。

 昔。
 何十年も現場主任として炭鉱に篭っていたカズミというハンターが居たという。
 優秀な炭鉱夫で、鉱脈を見つける眼が確かで、力もあり、優しい性格のため部下たちからも慕われていたそうだ。
 
 ある日、若い同業者が一心不乱に岩石を割っているそのオジサンの様子が、少しおかしいということに気づいたんだ。
 
 ゴクリ、と息を呑む音が、フレイアの座っている方から聞こえたが、私は無視した。

 同業者がその肩を叩く。
 まるで岩を叩いたような感触があった。
 同業者は、なにか異様な雰囲気を感じて少し後ずさる。
 そして、振り返るカズミ主任を見たんだ。

 カズミ主任は、顎が異常に発達していて、大きくしゃくれた上にハンマーのように硬質化していた。
 そしてピッケルではなく、その顎で採掘場所を叩き、岩を割っていたんだ。

 驚いて腰を抜かしたハンターの前で、カズミ主任は掘り出した鉱石を口に入れ、ボリボリと貪った。鉱石を食べ終わるとにやりと笑い、身体を丸めて高速で転がって何処かへ行ってしまったそうだ。
 
 それ以降、その炭鉱にはウラガンキンが出現するようになり、みんな「アレはあまりに炭鉱夫にのめり込んだ主任がついにその身を変化させてしまったものだ」と噂したそうだ。



04.
 私が話し終えると、フレイアは呆れたふうを装って、しかし少し声を震わせながら笑い飛ばした。
「馬鹿らしい話ね」
 妙に饒舌になって、フレイアは続ける。
「そんなことあるわけないじゃない。カズミとか、それっぽい名前を出して本当にあったかのように演出しているけど、それって水のない砂原に置き去りにされたハンターが、水がなくても生きることの出来るモンスターに変化して生き延びたとか、そんな話でしょう。そもそもウラガンキンの生態はギルドが把握しているはずよ。ハンターが変化しただなんて、荒唐無稽も甚だしいわ」

 いや、こんな今ここで私が考えた与太話をそんなムキになって否定するのはどうでもいいから、モスSフェイクに手をかけろよ。せっかく気を引いたのに。

 そんな表情をしようとしたが、如何せんあまり他人に感情を悟られないように生きてきた私は、こういう時どんな顔をしていいのかわからない。
 なので無表情のままフレイアを見返すことしかできなかった。フレイアのように表情を自在に操ることなど出来ないのだ。

「いいえ。私は興味深い話だと思います」
 モス卿が話し始めて、やっと自分のやるべきことを思い出したのだろう。フレイアはハッとしたような顔をしたが、時すでに遅し、だ。
「一つの道を極め、それに全てを捧げる。私もそうなりたいものです」
 ……まぁ、この人がなりたいのは、ウラガンキンではなくてモスなんだろうな。

 フレイアが、こっそりとモス卿の後ろに移動したが、悪あがきにも程があると私は思った。
 予想通り、モス卿は自然に移動して私のそばに近づき、結局フレイアに背後を取らせることはなかった。

「ウルズさんの装備しているパピメルですが」
「あ、はい」
「新品のようですが、これを着けて狩りに行くのは初めてで?」
「ウラガンキンのような大物に行くのは初めてです。試しとして、ハチミツを取りに行ったり、きのこを取りに行ったりしたことはありますけど」
「なるほど……」
 モス卿は頷き、黙った。
「その時に小型のモンスターも狩ったのですが、腕が振りやすいので前のぬのの服……いえ、前の装備よりは攻撃力も上がるのではないかと思うんですけど」
「それは素晴らしい。あなたがパピメル装備を選んだのは正解だと思いますよ。狩猟用の装備としてもそうですし、見た目も可愛らしい。しかし……」
「?」
「先輩ハンターとして忠告しておきますね。あまり攻撃を主体に考えてしまうのはいけません。色々な所で同じようなことを言われているでしょうが、まずは回避を意識して動きましょう。攻撃は回避の後で。いいね?」
「は……はい」
 モス卿は子供をあやすように私の頭をポンポンと軽く叩き、笑った(ように感じた)。
 
 フレイアがモス卿の後ろから忍び寄ったが、彼はさりげなくアイテムボックスの前に移動し、中身の整理と確認を始めてしまった。
 
 悔しそうな顔をするフレイアを、しかし私とロキはジト目で見やった。



05.
 火山の麓に到着すると、まず依頼主である炭鉱を管理する会社の現地スタッフに迎え入れられた。
 炭鉱組合地域連という看板がかけられた小さな事務所で、鉱石や燃石炭の在庫や出荷などの管理、鉱石市場への働きかけや新たな販売先の開拓、ハンターズギルドとの折衝、そして炭鉱夫たちの地位向上運動、それらに伴う事務や経理の一切を手がけている炭鉱組合の支所との事だった。

 ウラガンキンの行動パターンは、現地スタッフがある程度は調査し把握されており、元ハンターだという構成員の一人から渡された情報をもとに鉱山内を歩くと、比較的簡単にウラガンキンを発見することが出来た。

 ウラガンキンは全身に鉱石をまとったような姿をした巨体の獣竜種で、発達した後脚と、小さな前脚、前傾で歩く姿勢が同種と共通している。
 ウラガンキン固有の特徴としては、その固く発達した顎があげられる。これをハンマーのように振り下ろすことで、鉱石を砕き、食べる。
 当然、武器としても使い、これに叩き潰されて生涯を終えたハンターも多い。
 巨体でパワフルだが、その反面、動き自体は速くない。
 しかし、身体を車輪のように丸めて転がることで、かなりの速度を出して移動することが出来る。その重量と相まって、これもまた脅威の衝撃力を誇る攻撃となる。

 最初にウラガンキンを見つけたのは、ニャンター登録で同行しているロキ……ではなく、鼻をひくつかせながら先頭を歩いていた子モスだった。
 モス卿はアイルーのオトモを持たない。しかし、子モスとプーギーをオトモと言って譲らず、狩りに同行させていた。
 ギルド法には、パーティを組む場合ハンターは四人までという制限がある。
 今回の場合、オトモが着いてくることは法から外れるのだが、そもそもプーギーや、あまつさえ子供とは言えモスをオトモとして登録するハンターなど皆無で、受付手続きとしても想定されていない。
 そのため、プーギーと子モスは員数外として着いてきている格好になっている。

 子モスはウラガンキンを見つけると、さっさと穴をほって隠れてしまった。
 プーギーはどうするのかと思うと、首に下げたポーチに鼻先を突っ込み、中からボール状のもの咥えてモス卿に投げ渡した。
 モス卿は「行きますよ、準備はOK?」と私達に確認し、フレイアが頷くと「では」と笑うように言って、プーギーから渡されたペイントボールをウラガンキンに投げつけた。

 叩き割った鉱石をモシャモシャと食べている最中だったウラガンキンの身体にペイントボールが当たって弾け、身体のかなりの部分にドロドロとしたピンクの液体となって付着する。
 溶剤のような鼻につく匂いが立ち込める。
 美味いものを食べているのを邪魔される事ほど腹の立つ事はない。ギロリ、とこちらを睨んだウラガンキンの気持ちはわからないでもない。
 食事を中断したウラガンキンはこちらを向き、息を吸い込むと怒ったように咆哮を発した。
 視界が歪み、身が竦むようなその咆哮が、戦闘開始の合図となった。

 ウラガンキンが最初にターゲットに定めたのは、私だった。
 ペイントボールを投げたのはモス卿なのに。

 地面が揺れるような重量でドスドスと歩き寄り、その大顎を体ごと振り上げる。
 動き自体は直線的で、私は攻撃してくる軌道を読んで、あらかじめ移動する。目論見の通り、ウラガンキンの鉄槌はすでに私が居なくなっているスペースに叩きつけられた。
 その衝撃はかなりのもので、衝撃で地面が揺れる。近くにいたら動けなくなっていたかもしれない。
 ウラガンキンの攻撃が終わったのを見て、私はダッシュして近づき、抜刀しながら跳びかかるように斬りつける。全身に鉱石やら固まった溶岩やらが鎧のように付着しているが、それでも関節部にならば刃は通る。
 私の力では大したダメージを与えることは出来ないかもしれないが、刃に塗布された毒がじわじわと体力を奪っていくはずだ。
 それにしても。
 パピメル装備の身体の動かしやすさは、私にある種の快感を感じさせた。
 力を込めやすいのだ。スタミナも消費しない。
 跳び込みながら斬りつけ、切り上げ、さらに剣を振り下ろす。
 いつもならば、ここで一度回避するが、私は少し、攻撃に酔った。
 更に水平に斬りつけ、最後の一発とばかり渾身の力を込めて身体を回転させながら刃を叩きつけようとした。

 ウラガンキンが尻尾を振り回しているのに気がついた時には、もう攻撃を止めることなど出来ないアクションに入っていた。

 最低限の防御行動すら取ることが出来ず、私は固く重いその尻尾の直撃を喰らい吹っ飛んだ。
 もしもパピメル装備を着ていなければ、ネコタクのお世話になっていたかもしれない。

 強い衝撃から回復し、立ち上がろうとした私の目に映ったのは、身体を車輪のように丸めて突進してくるウラガンキンの姿だった。
 それはまるで巨大な落石のような勢いで、私を轢き潰しに来ていた。
 もう、避けることは出来ないタイミングだった。

 死ぬかも。
 不思議と冷静な部分が残っている意識がそう考える。

 以前は、それはさほど怖いことではなかった。というか、どうでも良かった。私が死んだところで、世界には大した影響など無い。
 むしろ消えたいと思ったことも多かった。
 そうならなかったのは、まあ心が意地汚いからだろう。

 今は。
 フレイアとロキの顔が頭に浮かんだ。

 死にたくはないな。
 私は、無駄だと理性が叫ぶ中、反射的に盾を構えた。しかし、それは巨大な質量を持つウラガンキンの前にあまりに小さな防護壁だった。
 やっぱだめかな。

「左へ跳べ!!」

 初めて聞くモス卿の切羽詰まった声に、私は反射的に左へと回避した。
 間に合うはずもない間合いと、ウラガンキンの突進スピード。

 風景全てがめまぐるしく変化していく中で、私は見た。

 フレイアがガンランスを捨てて両手で盾を構え、突進するウラガンキンにぶちかましをかける。彼女は当然のように弾き飛ばされたが、ウラガンキンの軌道もブレた。
 さらにモス卿が私の前に立ちはだかり、別々に持った剣と盾を重ね合わせながら振り上げる。
 迫り来るウラガンキンとは至近の距離。
 モス卿は、武器を合体させる際、盾であり斧の刃である部分を前に押し出していた。
 ウラガンキンの突進をその盾で受け止める。
 回転する巨大なヤスリのような体表との接点から美しく火花が上がっていた。
 ウラガンキンの突進力に後ずさりながらも両足は踏ん張ったまま体勢を崩さず、モス卿は衝撃を受け流しつつ一本の斧となった剣と盾を振り下ろした。
 
 軌道がブレていたウラガンキンはそれで完全にバランスを崩し、私の右隣りギリギリを通過して、勢いで遥か後方まで転がり、転倒した。

 私が呆然としていると、その目の前にプーギーが現れ、首に下げた道具袋の中に鼻先を突っ込み、白いボールの様なものを放り出した。
 命の危機を脱した直後の私の目に、ゆっくりと放物線を描いて飛ぶのが映った。
 地面に達した瞬間、それは破裂し、爆発的に膨張する。そして白い煙幕となって付近一帯を包み込んだ。

「ウルズ、早く立て! 逃げるニャ!」
 けむり玉の効果のため姿が見えないが、近くで聞こえたロキの声に、私は反射的に身を起こした。
 すると、ロキの声が聞こえた反対側の脇に腕を差し込まれた。フレイアのそれだということは、感触でわかった。
「一旦退くわよ! 急いで!」
「ご……ごめん!」
 私たちは背を向けて走りだした。
 白く煙る視界の中、まるで私達を先導するかのように、子モスが走っているのがぼやけて見えた。
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コメント

遂にキター!

待ってました、モス卿エピソード!
アップお疲れ様です♪

まさかのオトモがモス。w
しかししっかり仕事してる・・・流石モス卿のモス。プーギーも含めて。
モス卿、モス肉は食べるんですね・・・しかも勧めてるし。
モス愛護団体とは一体。
それ以外にも突っ込みどころしかない。;

一方で腕は確かだったり、ウルズへの的確な忠告だったり。
モス卿っておいくつなんでしょうねぇ。
モデルのあの方も、年齢不詳ですが。w

果たしてモス卿の素顔は見らるのか?!←
続きも楽しみにしてますね。

yuki #Z0eBfVjg | URL | 2016/08/05 23:52 | edit

やっぱりモスがナンバーワン!と私です

モスを探求する者モスになるべし。モスSフェイクが素顔になってて剥ぐのは顔の皮をはぐのと一緒・・・ それが事実ならクトゥルフとかSCPにありそうな代物だなぁ。呪いの装備的なアレで。
あるいはルパン三世のように剥いでも剥いでもモスSフェイクが出てくるとかね!

プーギーがF的な働きをしてていいね! 子モスは子モスでオトモよりもいい働きしてるし。ペイントボールの勘違いはしかたないね。だってモスだもの。パッと見はモスだもの。

モスS一式が違和感なく仕事してる不思議。
いや不思議じゃないわ、日常だったわ

カンペ #- | URL | 2016/08/06 13:10 | edit

Re: 遂にキター!

>>yukiさん

MMD杯動画作成の合間合間を縫って、なんとか前半だけ完成しました。

MHFでは、プーギーがオトモのような事をしてくれるらしいので、それをイメージしてみました。
あちらではなんか歌って支援してくれるらしいです(システムをよく分かっていない)。
モスがオトモというのは流石に無いでしょうが、なんでもミラより強いモスが居るとかなんとか。

ちなみに。
モス愛護団体は実在します。
集会所★3 「沼地をめぐる攻防」のクエスト依頼文を見てみましょう。

このモス愛護団体は某グリーンピースっぽいけど。
モス卿はもう少しシビアで真摯なモスへの研究姿勢を持っています。
同じ食べるにしても、どのように調理し、どのように味付けしたら良いのかを研究します。
モスの死が無駄にならないようにと。
ぶっちゃけた話、このあたりのモス卿のモデルはさかなクンさんです。

酢味噌和えなのは、MH3Gでコックアイルーがそんな事を言っていたから。

モス卿。
こんなだけど当然、腕は確かです。なんせモデルがあの人だから……。つい最近、モスフェイクで強化マジオスを対峙したとかしないとか。

モス卿の素顔を見ようとしたフレイアがどうなるのか。
かんへ○さんには予めお伝えしてあったりしますが。
乞うご期待。

P.S.
どうでもいいけど。
クッキングパパの荒岩さん、名前は一味さんだってことはあまり知られていないかな?

ロキ #- | URL | 2016/08/06 23:35 | edit

Re: タイトルなし

>>カンペさん

シン・ゴジラ見に行きたいけど、とりあえずMMD杯が終わってから……。

それにしても、確かにマジオスは良いボスだったと思います。
オストガロアもそうですが、ミラルーツにしろ、グラン・ミラオスにしろ、ラスボスってなんか作業感が漂う感じ……。

モス卿の場合、モスS一式縛りというよりも、モスS一式に縛られたいという人ですね。
昔、ヘビィボウガンに縛られたいというコンセプトの「色々疲れた俺のヘビィボウガン物語」という動画があったとか無かったとか。

仮面が取れなくなってしまった人といえば、自分は火の鳥太陽編を思い出しますね。クトゥルフはあんまり知らないのです。

Fではプーギーが歌って支援してくれるみたい? 詳しくは知りませんが、その情報のみを頼りに、モスとプーギーがオトモという構成を思いつきました。

それにしても。
何故私はプーギーのBGMとして「熱情の律動」を一番最初に思い出してしまうのだろう……。

ロキ #- | URL | 2016/08/06 23:50 | edit

先日はどうもでした♪

未来編の続編キター♪



オトモが子モスに『モスのきもち』を身に着けたプーギーとは・・・



流石モス卿ぶっ飛んでいらっしゃる(笑)



それにしても・・・



ハンターランク6で人外レベルですか・・・



三桁とか・・・ましたや999なんて・・・



次はモス卿が華麗な盾斧さばきを披露するのかなぁと妄想しております(笑)



続編楽しみにしてますね~(^-^)/

けんゆう #028lExxE | URL | 2016/08/07 01:17 | edit

Re: 先日はどうもでした♪

>>けんゆうさん

ちょっと酔っ払っての返答になりますが、あしからずよろしくお願いします。ベルセルクの83話程度に書きすぎるかもしれませんが。

……
…………

基本的に、自分の小説では、底辺ハンターのウルズが上を見上げながら独白するような態ですので。
そりゃ上級ハンターなんて雲上人。
G級ハンターなど夢のまた夢。想像の範囲外だったりします。
でも、上位とかG級って多分、一般的なハンターからみたらそんなものではないかとも思っています。

そもそも、プレイヤーは当たり前のように上位だのG級だのに昇格しますが、そんな優秀なハンターは本当にごく稀だと思うんですよね。
基本的には採取などで小銭を稼ぐハンターが殆どなんじゃないか。
リアルに底辺を這いずっている自分← としてはそんな感じを持っています。

ちなみに、ネタバレですが。

モンハン小説では、最後の最後にミラ系に対抗し得るハンターが生まれます。

ウルズが独立して孤児院を経営することになるのですが、そこから。しかも彼女の晩年。
彼女が孤児院を経営する際に演説する内容が、自分の書きたいことの一つではあったりしますが。

しかし、これは単なるエンディング構想。

ゲームなどではこの「ミラ系に対抗し得るハンター」こそが主人公でしょうが、そこに至るまでの脇役ヘイムダルやフレイア、そして(晩年に至るまでの)ウルズの話が自分の書きたいところだったりします。

そこに至るまでには、少なくともフレイアとウルズが、○○の条件を突破して○○に帰り(ウルズはフレイアに連れて行かれ)、そこで様々な事があって、さらにその後に色々とあるのですが(大まかな流れは構想済み)。

一応、流れ的には自分の頭のなかにはあるものの、それはさておき、最後まで書くにはさて何年かかることやら、と思っています。

ネタバレはさすがに……。
気長に待っていていただければと思います。一応、最後までは(年単位でかかるかもしれないけど)書こうとは思っています。

ロキ #- | URL | 2016/08/07 23:18 | edit

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