モンハンブログ 週末の笛吹き
主にMH3GとMH4、MH4G、MHX系そしてモンハンワールドのプレイ日記を書いていきたいと思います。現在は「ロキ」という名前でオンラインに出没中。モンハン以外の事を書くブログ「ロキの試験的駄文」も始めました。
モンハン小説未来編 第六話 後編「 ウルズ、酒を飲ませる」 その3
2017/04/17 Mon. 03:42 [edit]
フレイアが完全に酔っ払い、ついにウルズを押さえつけて耳を甘噛みするわ、胸を触るわ、お尻をなでるわ、やりたい放題に。
そしてついには……。
そんな話を、MHXX効果で閲覧者数が多くなっている間に書こうと思っていたのですが。
すでに一日の閲覧者数は最大時の6割程度に。
むしろ、ウルズが一人飲みして心の闇を吐き出す展開の時に、もっとも閲覧者が多かったという……。
うーむ。
このタイミングの悪さが、自分の動画の再生数とか、小説の閲覧数の低さにつながっているんだろうなぁ……。
……
…………
え? それ以前に、内容の問題?
まぁ。それはともかく。
狩猟には全く触れないモンハン小説。
飲み会の終わりになります。

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そしてついには……。
そんな話を、MHXX効果で閲覧者数が多くなっている間に書こうと思っていたのですが。
すでに一日の閲覧者数は最大時の6割程度に。
むしろ、ウルズが一人飲みして心の闇を吐き出す展開の時に、もっとも閲覧者が多かったという……。
うーむ。
このタイミングの悪さが、自分の動画の再生数とか、小説の閲覧数の低さにつながっているんだろうなぁ……。
……
…………
え? それ以前に、内容の問題?
まぁ。それはともかく。
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08.ウルズ、失敗を悟る
身を寄せてくるフレイアを押し返そうとしていた私は、不穏な言葉を発したロキを、思わず見やった。
その隙に、フレイアはさらに私を押さえつけ、顔をくっつけてくる。
頬と頬が触れ合う。ゴツゴツしていた手と違って、肌がサラサラしているのが、何故かすごく印象に残った。
次の瞬間。
フレイアの唇が、私の耳たぶに触れた。
ひあッ!!
「や……やめろ。舐めるなフレイア!!」
「……んー……そう? じゃあ……」
「噛むな!」
痛いほど歯を立てられたわけではない。甘噛みだが……ちょっと……ちょっとまってくれ……。
「やだ」
「……!!」
「もっと味わう」
さらに耳たぶを甘噛みされながら、私は身を捩る。
コ……コレのどこが百合の気は無いだ!?
「うーん。結構なめらかな舌触りね。思ってたより弾力もある……。味は……」
あ、やっぱりこれは、好奇心を満たすためにやっているみたいだ。
私に興味を持ったというのは最初から宣言していたし、だから私に関して何でも知りたいとはさっきも言っていたが、まさか舌触りと味にまで興味の範囲に……。
ひうッ!!
む……胸を揉むな!
か……勝ち誇った顔をするな! 子供の頃に十分に食べさせてもらえなかったんだよ! 仕方ないじゃないか!
私は、完全に失敗した事を悟った。
浅はかだったのだ。
確かに、好奇心にあかせて、フレイアが酔っ払ったらどうなるのか、見てみたいと思った。
だから簡単にだが作戦を立て、実行した。
そしてフレイアの裏をかき、目的を達成し、勝利感に酔った。
だが。
酒に酔ったフレイアの行動は、こちらの予想の遥か上を行った。
好奇心を満たすという欲求を、全く我慢しなくなるとは……!!
ひゃいッ!
お尻を触るな! 太モモもだ! ええい! 撫で回すな! ス……スカートなんて履いてこなければよかった!!
「ウルズ……肌すべすべねぇ……」
「や……やめて……お願い……」
「んー、私、もっと色々と調べたいんだけど……そんなに嫌?」
涙を溜めて懇願すると、フレイアが身を引いた。
私は、少しホッとして、抵抗する力を緩めた。
油断した。
フレイアは、瞬間、ニヤリと笑うと、顔を近づけてきた。
躱す暇もあらばこそ。
私の唇は、フレイアに奪われていた。
「む……ぐ……」
「だから気をつけろと言ったニャ。そいつはキス魔だって」
いやおい、ロキ。普通は耳を甘噛みされるので終わると思うだろ。女同士だぞ。
カっと顔が熱くなるのが分かる。
フレイアは、唇で私を壁際に押さえつけ、舌で口腔内を舐め回し、やっと離れてくれた。
「ウルズ、唇、プルプルね。それに甘い味わいだわ」
さいで……。
私はがっくりと力なく項垂れた。味に関しては、多分、カシス多めの特製キールの味だろうよ。
さっき、フレイアの酔い方は、絡み酒でも泣き上戸でもなく、良い酔い方だと思った。
認識を誤っていた。
こいつ、最悪の酔っぱらいだ。
09.帰路
ロキが先導し、私は夜道を歩く。
酔いつぶれて眠ってしまったフレイアを背負いながら。
「まあ、なんニャ。フレイアがここまで酔いつぶれるのは、オレも初めて見たニャ」
「……言い訳のつもり?」
ジト目でロキを睨む。
「興味を持ったものをペタペタ触るのはよくある事ニャ。何にでも唇を付けるのも。だけど、まさかあそこまでやるとは……」
「……いいよ、もう……」
言及されている当の本人は、私の背中でスースーと可愛らしい寝息を立てている。
「フレイアが、ここまで酒に呑まれるとは思っていなかったニャ。普段はもっとちゃんとしてて、飲んでも理性をなくしたりはしないニャ。本当ニャ」
「わかったよ。私も、フレイアが酔っ払ったらどうなるのか見たくて、ちょっとズルをしたから……」
私はため息を付きつつ、フレイアを背負い直した。
少しの間、無言で歩いていたが、ロキがポツリと言った。
「オレも、結構酔っているから、本音で話すけど」
??
「フレイアは、好奇心が異常に強いし、変ニャところも沢山あるニャ……」
うん。それは否定しない。
「でも、出自は田舎の村の娘ニャ。ウルズの前では色々と気張っているけど、これで割と普通の女の子ニャ」
普通……? それには異論があるぞ?
そうも思ったが、私は口に出さず、ロキの話を促した。
「ロキ? 結論は? 結局、何を言いたいの?」
「結論から言えとは、ドライな受け答えをするニャお前は。まあ、オレが言いたいのは、今日の事でフレイアを嫌いにならないでほしいし、これからも親友として付き合ってやって欲しいニャ。これはフレイアの兄貴分としてのお願いニャ」
親友?
親友……。
親友……か。
私は一つ、ため息にも似た安堵の息を吐き、ロキに答えた。
「私はね、思うんだ、ロキ」
「んニャ?」
「私は、自分の家族がどのような構成だったのかも知らないけど、もしも姉がいたら、フレイアみたいだったら良かったなって」
先日、モツ屋で脳裏に蘇った、赤ん坊だった頃の記憶がよぎる。
生まれ故郷の村を襲った青と金色のモンスターから隠すため、私を堆肥の山に突っ込んだあの人。本当に姉だったのか、それともただの知人だったのかは分からない。いや、そもそもあの記憶が本当にあったことなのかも怪しいが。
しかし、私の命を救ってくれた人が居たのは確かだ。
いつ死んでも別にいい、と思っていた自分に、やっぱり死にたくはないという前向きさを、フレイアは与えてくれた。私の中では「姉」と重なる部分がある。
私の言葉を聞いて、ロキはただ「そうか」とだけ呟いた。
「でも、もうフレイアとは飲まない。飲むにしても、最初に飲みすぎないように厳命するか、あるいは私が先にグデングデンに酔っぱらって、フレイアに酔う隙を与えずに介抱させる。酔っぱらいの中にシラフで居るのは上策ではないって、読んだ本にも書いてあった」
「それも良いニャ。今日のこいつは、ちょっとどうかしていたニャ。自分が先に酔っ払うと思っていなかったみたいニャ。まあ、お前の策にハマったせいニャ。こいつもまだまだ未熟ニャ」
「途中までは、勝利感があったんだけどね」
私は肩をすくめた。
「まさか、酔ったフレイアがあんなになるとは……ね(ため息)。ところでロキ、家はどこら辺になるの?」
「もうハンター居住区に入っているニャ。もうすぐニャ」
10.フレイアの家
ギルドが所有している土地をハンター達に開放している一帯のことを、ハンター居住区という。
鍛冶や道具屋などの施設が揃い、区割りして貸し出している畑などもあり、フレイアを含めたフリーハンターの多くはそこに住んでいる。
家は、基本的にはギルドが管理者となっている賃貸住宅がほとんど。
ギルドが地区全体を管理運営しているため、ハンター達に最大限の便宜が計られ、また交流も多いため情報交換も容易い。
ハンターとして住みやすい環境になっている。
ただし。
家賃や管理費、各種の会費などは割高で、住むにはそれなりにコストがかかる。
ある意味で、ギルドがハンターに「稼ぐ」ようプレッシャーをかけているという側面もあり、それ故、私のような底辺ハンターには、居住区に苦手意識のようなものを持っている者も多い。
少なくとも、底辺ハンターが住むような場所ではない。ちょっとした高級住宅街だ。
今日、初めて立ち入ったハンター居住区は、夜道ながら家も街並みも綺麗なのが分かった。
ハンターという人種には粗野な性格の人も多いのだが、ここは清潔な印象がある。ギルドが管理を徹底しているのだろう。
花や花壇が多いのも、雰囲気の向上に一役買っているようだ。
この街の屋外集会所も中央に「大花壇」が設置されているが、それはギルドマスターの趣味だと言う。この居住区の花も、その関係で植えられているのかもしれない。
フレイアの家は、ハンター居住区の外れにあった。
一軒家ではなく、集合住宅の二階。
二部屋とリビング、キッチン、そしてトイレと風呂のある部屋だった。
私の棲み家よりはずっとレベルが高いが、ハンター居住区の中ではむしろ安価な物件だろう。
何となく、もっとお嬢様っぽい場所を想像していたのだが。
ロキが鍵を開けて、フレイアを背負った私を中に招き入れる。
光蟲を封入した照明器具のフードを取ると、部屋の中が明るく照らされた。
食卓と椅子、そしてソファ程度の最低限の家具。
あとは小さな本棚に狩猟に関する本が何冊か置かれただけのリビングは、思っていた以上に質素だった。
ソファにフレイアを降ろすと、彼女は寝ぼけたまま「ロキにー……みずー……」と言った。
ロキがキッチンから、水の入ったコップを持ってくる。
何故か私に渡されたので、仕方がない、それをフレイアの口に近づけた。
「大丈夫? ほら水だよ」
フレイアはほとんど眠ったような状態で、コップに手を当て、飲み干した。
「……ねるー……」
と、呟くと、緩慢な動きで立ち上がり、フラフラしながら寝室へと歩いていった。
「やれやれ……。とりあえず、これで一息ついたニャ」
「うん、お疲れ。……じゃあ、私はこれで……」
席を立とうとすると、ロキが信じられないものを見るような目で、私を凝視した。
「は? お前はニャにを言っているニャ? もう遅いニャ。泊まっていくニャ」
「……え?」
その考えは、全く頭になかった。
そもそも、人の家に泊まるという行為自体、私の想像の範囲外だったのだ。
「え? でも悪いし……」
「この時間に帰す方が、よっぽど悪いニャ。とりあえず、キッチンで口をゆすぐニャ。……ああ、客間は無いから、フレイアと一緒に寝るニャ」
「一緒に……?」
「イヤかニャ?」
「別にイヤじゃないけど、誰かと一緒に寝た経験がない……」
言葉にした瞬間。
一瞬、意識が暗転した。
誰かと一緒に寝た経験……あるにはあるか……。思い出したくもない過去だが。
「ん? どうしたニャ?」
気がつくと、ロキがいぶかしげに私の顔を見ていた。
……あれ? なんだっけ……? そうだ……。誰かと一緒に寝たことは無いんだった。
だから、どういう顔をして他人のベッドに入って良いのか、よく分からない。
「私は嫌じゃないけど……良いのかな?」
「フレイアは別にそういうのを気にするタイプじゃニャいニャ。ウルズが良ければそれでいいニャ」
「……わかった。じゃあ今日は厄介になるよ」
私は、キッチンで水を飲み、フレイアの寝室に入っていった。
寝室は、少し大きめのベッドとクローゼット、そして机が置かれた、やや手狭な印象がある部屋だった。机の上には本やノート、筆記用具が雑然と置かれているが、部屋全体はきちんと整理整頓されている。
フレイアは布団の中に入らず、ジャケットだけを脱いで、ベッドの上に倒れ込むように、俯けに眠っていた。
大きな抱枕が、フレイアの近くに転がっている。
私は、ヤレヤレ……という顔をして、フレイアを仰向けになるよう寝かしつけて布団を掛けた。フレイアは寝言のように、んー、とか、あー、とか言っていたが、しかし体勢を整えると再び静かな寝息を立て始めた。
私は普段の習慣に従って、服を脱いで畳み、机の上に置かせてもらった。
棲み家で眠るときと同じく、下着姿になってベッドに入る。
「お邪魔するよ……」
さすがに、私も眠くなってきた。本当は歯を磨きたいのだが、今日は諦めるしかない。
布団の中は、フレイアの体温で既に暖かい。
シーツは私が棲み家で使っている物よりもずっと質がよく、肌触りが気持ちよかった。
フレイアの寝息を聞きながら、私もウトウトとし始める。
半分眠りながら、私は思った。
基本的に人との触れ合いが嫌いな私だが、フレイアとならばこうして一緒のベッドに入っていても不快感を感じない。
これが、知らない人だったら。
ましてや男性だったりしたら、トラウマから来るストレスで、恐らく体調が悪くなって眠るどころじゃなくなっているだろう。
あの頃の体験。あの頃の記憶。
伯母と、何よりもあのクソヤロウの仕打ちのせいだ。
でも、フレイアならば触れられても大丈夫だったという事に、今更ながらに気づいた。
それは私が、それだけフレイアには心を許しているということなのだろう、きっと。
意識したことは無いのだが。
モツ屋で飲んだ時、フレイアへの嫉妬心を認識した。
嫉妬は間違いなく自分の中にある感情だし、私はそれを内面では受け入れている。
だけど同時に、こうして心を許しているのも本当だ。
酒を飲んで、心の重しを取り払って、普段抑圧されている精神を垣間見て、幾つもの相対する感情が矛盾せずに並び立っていることを初めて知った。
自分の心って、本当に複雑だ……。
そんなことを考えながら。
意識が朦朧とし始め……。
……もう数瞬で、完全に眠りに落ちる……。
と、いうところで。
いきなり抱きつかれた。
「ちょ……え……?」
いやまて、フレイア。私は抱枕じゃない。お前が抱きつくべき寝具は、向こうに転がっているだろう!
しかし、眠っているフレイアが気づくはずもなく。
……もはや、抵抗する気力も起きない……。
いいよもう。好きにしろよ……。
……
…………
おいこら、そうは言ったが、よせ。項に唇を当てるな……。ええい! 耳に指を入れるな……!
ひううッ!!
ED.朝
カーテン越しの朝日を浴びて、フレイアは目を覚ました。
もともと寝起きは良いほうだが、今日はいつにもましてやけにスッキリとした目覚めだ、と彼女は思った。
ベッドの上に身を起こし、大きく一つ、伸びをする。
パジャマではなく、普段着のままで寝ていることに気がついた。
そう言えば、どうやって帰ってきたのかの記憶がない。
思っていたより飲んでいたのだろうか。
「んん……ちょっと気をつけなきゃね」
フレイアは独り言ちながらベッドから出て、リビングに向かった。
リビングには、ロキと、そしてウルズが居た。
「あれ? ウルズ? なんでここに?」
「……さあ、何でだろうね……」
目の下にくまを作ったウルズが呟く。
「ニャ、昨日、ブレイヴハートで眠ったフレイアを連れてきてもらったニャ」
「あら。ごめんなさい。私もちょっとはしゃいで飲みすぎちゃったかも」
「……うんまあ、そうだね」
「? なんか元気ないわねウルズ」
「……そうかもね。……悪いけどフレイア。今日は私、休ませてもらうよ」
「いいけど、なんで?」
「……寝不足と二日酔い、かな……」
「あら、それじゃ仕方ない……けど、でもダメよウルズ。ハンターとして体調管理はちゃんとしなくちゃ」
「……」
「……(ニャ)」
ロキと顔を見合わせたウルズに、フレイアは言った。
「確かに昨日のお酒は楽しかったわ……私も飲みすぎたみたいで、ちょっと忘れている部分もあるけど……。とにかく楽しかったのは覚えてる。でもね」
フレイアは、ウルズの眼を見た。
「ロキも言っていたけど、酒は飲んでも飲まれるな、よ。まあウルズは最近、初めて飲んだというから仕方がないかもしれないけど、次の日まで残るような飲み方を続けたら、社会的信用を失うし、何よりも身体に悪いわ」
「……そうだね、気をつけるよ、フレイア。……さて……私は自分の棲み家に帰る。帰って寝る」
「あら、別にここで寝ていっていいのよ?」
「……いや……帰るよ」
「そう……。なら送っていくわ。昨日の夜は、私も迷惑を掛けたみたいだし」
「……ああ、うん……。……じゃあ……お願い……」
ウルズと一緒に歩く道のりで。
フレイアは言った。
「楽しかったわ。また一緒に飲みたいわね」
「……そうだね、その時には付き合うよ。ただ……」
「ん?」
「飲まれない程度に、ならね」
ウルズは、力なくそう答えたのだった。
08.ウルズ、失敗を悟る
身を寄せてくるフレイアを押し返そうとしていた私は、不穏な言葉を発したロキを、思わず見やった。
その隙に、フレイアはさらに私を押さえつけ、顔をくっつけてくる。
頬と頬が触れ合う。ゴツゴツしていた手と違って、肌がサラサラしているのが、何故かすごく印象に残った。
次の瞬間。
フレイアの唇が、私の耳たぶに触れた。
ひあッ!!
「や……やめろ。舐めるなフレイア!!」
「……んー……そう? じゃあ……」
「噛むな!」
痛いほど歯を立てられたわけではない。甘噛みだが……ちょっと……ちょっとまってくれ……。
「やだ」
「……!!」
「もっと味わう」
さらに耳たぶを甘噛みされながら、私は身を捩る。
コ……コレのどこが百合の気は無いだ!?
「うーん。結構なめらかな舌触りね。思ってたより弾力もある……。味は……」
あ、やっぱりこれは、好奇心を満たすためにやっているみたいだ。
私に興味を持ったというのは最初から宣言していたし、だから私に関して何でも知りたいとはさっきも言っていたが、まさか舌触りと味にまで興味の範囲に……。
ひうッ!!
む……胸を揉むな!
か……勝ち誇った顔をするな! 子供の頃に十分に食べさせてもらえなかったんだよ! 仕方ないじゃないか!
私は、完全に失敗した事を悟った。
浅はかだったのだ。
確かに、好奇心にあかせて、フレイアが酔っ払ったらどうなるのか、見てみたいと思った。
だから簡単にだが作戦を立て、実行した。
そしてフレイアの裏をかき、目的を達成し、勝利感に酔った。
だが。
酒に酔ったフレイアの行動は、こちらの予想の遥か上を行った。
好奇心を満たすという欲求を、全く我慢しなくなるとは……!!
ひゃいッ!
お尻を触るな! 太モモもだ! ええい! 撫で回すな! ス……スカートなんて履いてこなければよかった!!
「ウルズ……肌すべすべねぇ……」
「や……やめて……お願い……」
「んー、私、もっと色々と調べたいんだけど……そんなに嫌?」
涙を溜めて懇願すると、フレイアが身を引いた。
私は、少しホッとして、抵抗する力を緩めた。
油断した。
フレイアは、瞬間、ニヤリと笑うと、顔を近づけてきた。
躱す暇もあらばこそ。
私の唇は、フレイアに奪われていた。
「む……ぐ……」
「だから気をつけろと言ったニャ。そいつはキス魔だって」
いやおい、ロキ。普通は耳を甘噛みされるので終わると思うだろ。女同士だぞ。
カっと顔が熱くなるのが分かる。
フレイアは、唇で私を壁際に押さえつけ、舌で口腔内を舐め回し、やっと離れてくれた。
「ウルズ、唇、プルプルね。それに甘い味わいだわ」
さいで……。
私はがっくりと力なく項垂れた。味に関しては、多分、カシス多めの特製キールの味だろうよ。
さっき、フレイアの酔い方は、絡み酒でも泣き上戸でもなく、良い酔い方だと思った。
認識を誤っていた。
こいつ、最悪の酔っぱらいだ。
09.帰路
ロキが先導し、私は夜道を歩く。
酔いつぶれて眠ってしまったフレイアを背負いながら。
「まあ、なんニャ。フレイアがここまで酔いつぶれるのは、オレも初めて見たニャ」
「……言い訳のつもり?」
ジト目でロキを睨む。
「興味を持ったものをペタペタ触るのはよくある事ニャ。何にでも唇を付けるのも。だけど、まさかあそこまでやるとは……」
「……いいよ、もう……」
言及されている当の本人は、私の背中でスースーと可愛らしい寝息を立てている。
「フレイアが、ここまで酒に呑まれるとは思っていなかったニャ。普段はもっとちゃんとしてて、飲んでも理性をなくしたりはしないニャ。本当ニャ」
「わかったよ。私も、フレイアが酔っ払ったらどうなるのか見たくて、ちょっとズルをしたから……」
私はため息を付きつつ、フレイアを背負い直した。
少しの間、無言で歩いていたが、ロキがポツリと言った。
「オレも、結構酔っているから、本音で話すけど」
??
「フレイアは、好奇心が異常に強いし、変ニャところも沢山あるニャ……」
うん。それは否定しない。
「でも、出自は田舎の村の娘ニャ。ウルズの前では色々と気張っているけど、これで割と普通の女の子ニャ」
普通……? それには異論があるぞ?
そうも思ったが、私は口に出さず、ロキの話を促した。
「ロキ? 結論は? 結局、何を言いたいの?」
「結論から言えとは、ドライな受け答えをするニャお前は。まあ、オレが言いたいのは、今日の事でフレイアを嫌いにならないでほしいし、これからも親友として付き合ってやって欲しいニャ。これはフレイアの兄貴分としてのお願いニャ」
親友?
親友……。
親友……か。
私は一つ、ため息にも似た安堵の息を吐き、ロキに答えた。
「私はね、思うんだ、ロキ」
「んニャ?」
「私は、自分の家族がどのような構成だったのかも知らないけど、もしも姉がいたら、フレイアみたいだったら良かったなって」
先日、モツ屋で脳裏に蘇った、赤ん坊だった頃の記憶がよぎる。
生まれ故郷の村を襲った青と金色のモンスターから隠すため、私を堆肥の山に突っ込んだあの人。本当に姉だったのか、それともただの知人だったのかは分からない。いや、そもそもあの記憶が本当にあったことなのかも怪しいが。
しかし、私の命を救ってくれた人が居たのは確かだ。
いつ死んでも別にいい、と思っていた自分に、やっぱり死にたくはないという前向きさを、フレイアは与えてくれた。私の中では「姉」と重なる部分がある。
私の言葉を聞いて、ロキはただ「そうか」とだけ呟いた。
「でも、もうフレイアとは飲まない。飲むにしても、最初に飲みすぎないように厳命するか、あるいは私が先にグデングデンに酔っぱらって、フレイアに酔う隙を与えずに介抱させる。酔っぱらいの中にシラフで居るのは上策ではないって、読んだ本にも書いてあった」
「それも良いニャ。今日のこいつは、ちょっとどうかしていたニャ。自分が先に酔っ払うと思っていなかったみたいニャ。まあ、お前の策にハマったせいニャ。こいつもまだまだ未熟ニャ」
「途中までは、勝利感があったんだけどね」
私は肩をすくめた。
「まさか、酔ったフレイアがあんなになるとは……ね(ため息)。ところでロキ、家はどこら辺になるの?」
「もうハンター居住区に入っているニャ。もうすぐニャ」
10.フレイアの家
ギルドが所有している土地をハンター達に開放している一帯のことを、ハンター居住区という。
鍛冶や道具屋などの施設が揃い、区割りして貸し出している畑などもあり、フレイアを含めたフリーハンターの多くはそこに住んでいる。
家は、基本的にはギルドが管理者となっている賃貸住宅がほとんど。
ギルドが地区全体を管理運営しているため、ハンター達に最大限の便宜が計られ、また交流も多いため情報交換も容易い。
ハンターとして住みやすい環境になっている。
ただし。
家賃や管理費、各種の会費などは割高で、住むにはそれなりにコストがかかる。
ある意味で、ギルドがハンターに「稼ぐ」ようプレッシャーをかけているという側面もあり、それ故、私のような底辺ハンターには、居住区に苦手意識のようなものを持っている者も多い。
少なくとも、底辺ハンターが住むような場所ではない。ちょっとした高級住宅街だ。
今日、初めて立ち入ったハンター居住区は、夜道ながら家も街並みも綺麗なのが分かった。
ハンターという人種には粗野な性格の人も多いのだが、ここは清潔な印象がある。ギルドが管理を徹底しているのだろう。
花や花壇が多いのも、雰囲気の向上に一役買っているようだ。
この街の屋外集会所も中央に「大花壇」が設置されているが、それはギルドマスターの趣味だと言う。この居住区の花も、その関係で植えられているのかもしれない。
フレイアの家は、ハンター居住区の外れにあった。
一軒家ではなく、集合住宅の二階。
二部屋とリビング、キッチン、そしてトイレと風呂のある部屋だった。
私の棲み家よりはずっとレベルが高いが、ハンター居住区の中ではむしろ安価な物件だろう。
何となく、もっとお嬢様っぽい場所を想像していたのだが。
ロキが鍵を開けて、フレイアを背負った私を中に招き入れる。
光蟲を封入した照明器具のフードを取ると、部屋の中が明るく照らされた。
食卓と椅子、そしてソファ程度の最低限の家具。
あとは小さな本棚に狩猟に関する本が何冊か置かれただけのリビングは、思っていた以上に質素だった。
ソファにフレイアを降ろすと、彼女は寝ぼけたまま「ロキにー……みずー……」と言った。
ロキがキッチンから、水の入ったコップを持ってくる。
何故か私に渡されたので、仕方がない、それをフレイアの口に近づけた。
「大丈夫? ほら水だよ」
フレイアはほとんど眠ったような状態で、コップに手を当て、飲み干した。
「……ねるー……」
と、呟くと、緩慢な動きで立ち上がり、フラフラしながら寝室へと歩いていった。
「やれやれ……。とりあえず、これで一息ついたニャ」
「うん、お疲れ。……じゃあ、私はこれで……」
席を立とうとすると、ロキが信じられないものを見るような目で、私を凝視した。
「は? お前はニャにを言っているニャ? もう遅いニャ。泊まっていくニャ」
「……え?」
その考えは、全く頭になかった。
そもそも、人の家に泊まるという行為自体、私の想像の範囲外だったのだ。
「え? でも悪いし……」
「この時間に帰す方が、よっぽど悪いニャ。とりあえず、キッチンで口をゆすぐニャ。……ああ、客間は無いから、フレイアと一緒に寝るニャ」
「一緒に……?」
「イヤかニャ?」
「別にイヤじゃないけど、誰かと一緒に寝た経験がない……」
言葉にした瞬間。
一瞬、意識が暗転した。
誰かと一緒に寝た経験……あるにはあるか……。思い出したくもない過去だが。
「ん? どうしたニャ?」
気がつくと、ロキがいぶかしげに私の顔を見ていた。
……あれ? なんだっけ……? そうだ……。誰かと一緒に寝たことは無いんだった。
だから、どういう顔をして他人のベッドに入って良いのか、よく分からない。
「私は嫌じゃないけど……良いのかな?」
「フレイアは別にそういうのを気にするタイプじゃニャいニャ。ウルズが良ければそれでいいニャ」
「……わかった。じゃあ今日は厄介になるよ」
私は、キッチンで水を飲み、フレイアの寝室に入っていった。
寝室は、少し大きめのベッドとクローゼット、そして机が置かれた、やや手狭な印象がある部屋だった。机の上には本やノート、筆記用具が雑然と置かれているが、部屋全体はきちんと整理整頓されている。
フレイアは布団の中に入らず、ジャケットだけを脱いで、ベッドの上に倒れ込むように、俯けに眠っていた。
大きな抱枕が、フレイアの近くに転がっている。
私は、ヤレヤレ……という顔をして、フレイアを仰向けになるよう寝かしつけて布団を掛けた。フレイアは寝言のように、んー、とか、あー、とか言っていたが、しかし体勢を整えると再び静かな寝息を立て始めた。
私は普段の習慣に従って、服を脱いで畳み、机の上に置かせてもらった。
棲み家で眠るときと同じく、下着姿になってベッドに入る。
「お邪魔するよ……」
さすがに、私も眠くなってきた。本当は歯を磨きたいのだが、今日は諦めるしかない。
布団の中は、フレイアの体温で既に暖かい。
シーツは私が棲み家で使っている物よりもずっと質がよく、肌触りが気持ちよかった。
フレイアの寝息を聞きながら、私もウトウトとし始める。
半分眠りながら、私は思った。
基本的に人との触れ合いが嫌いな私だが、フレイアとならばこうして一緒のベッドに入っていても不快感を感じない。
これが、知らない人だったら。
ましてや男性だったりしたら、トラウマから来るストレスで、恐らく体調が悪くなって眠るどころじゃなくなっているだろう。
あの頃の体験。あの頃の記憶。
伯母と、何よりもあのクソヤロウの仕打ちのせいだ。
でも、フレイアならば触れられても大丈夫だったという事に、今更ながらに気づいた。
それは私が、それだけフレイアには心を許しているということなのだろう、きっと。
意識したことは無いのだが。
モツ屋で飲んだ時、フレイアへの嫉妬心を認識した。
嫉妬は間違いなく自分の中にある感情だし、私はそれを内面では受け入れている。
だけど同時に、こうして心を許しているのも本当だ。
酒を飲んで、心の重しを取り払って、普段抑圧されている精神を垣間見て、幾つもの相対する感情が矛盾せずに並び立っていることを初めて知った。
自分の心って、本当に複雑だ……。
そんなことを考えながら。
意識が朦朧とし始め……。
……もう数瞬で、完全に眠りに落ちる……。
と、いうところで。
いきなり抱きつかれた。
「ちょ……え……?」
いやまて、フレイア。私は抱枕じゃない。お前が抱きつくべき寝具は、向こうに転がっているだろう!
しかし、眠っているフレイアが気づくはずもなく。
……もはや、抵抗する気力も起きない……。
いいよもう。好きにしろよ……。
……
…………
おいこら、そうは言ったが、よせ。項に唇を当てるな……。ええい! 耳に指を入れるな……!
ひううッ!!
ED.朝
カーテン越しの朝日を浴びて、フレイアは目を覚ました。
もともと寝起きは良いほうだが、今日はいつにもましてやけにスッキリとした目覚めだ、と彼女は思った。
ベッドの上に身を起こし、大きく一つ、伸びをする。
パジャマではなく、普段着のままで寝ていることに気がついた。
そう言えば、どうやって帰ってきたのかの記憶がない。
思っていたより飲んでいたのだろうか。
「んん……ちょっと気をつけなきゃね」
フレイアは独り言ちながらベッドから出て、リビングに向かった。
リビングには、ロキと、そしてウルズが居た。
「あれ? ウルズ? なんでここに?」
「……さあ、何でだろうね……」
目の下にくまを作ったウルズが呟く。
「ニャ、昨日、ブレイヴハートで眠ったフレイアを連れてきてもらったニャ」
「あら。ごめんなさい。私もちょっとはしゃいで飲みすぎちゃったかも」
「……うんまあ、そうだね」
「? なんか元気ないわねウルズ」
「……そうかもね。……悪いけどフレイア。今日は私、休ませてもらうよ」
「いいけど、なんで?」
「……寝不足と二日酔い、かな……」
「あら、それじゃ仕方ない……けど、でもダメよウルズ。ハンターとして体調管理はちゃんとしなくちゃ」
「……」
「……(ニャ)」
ロキと顔を見合わせたウルズに、フレイアは言った。
「確かに昨日のお酒は楽しかったわ……私も飲みすぎたみたいで、ちょっと忘れている部分もあるけど……。とにかく楽しかったのは覚えてる。でもね」
フレイアは、ウルズの眼を見た。
「ロキも言っていたけど、酒は飲んでも飲まれるな、よ。まあウルズは最近、初めて飲んだというから仕方がないかもしれないけど、次の日まで残るような飲み方を続けたら、社会的信用を失うし、何よりも身体に悪いわ」
「……そうだね、気をつけるよ、フレイア。……さて……私は自分の棲み家に帰る。帰って寝る」
「あら、別にここで寝ていっていいのよ?」
「……いや……帰るよ」
「そう……。なら送っていくわ。昨日の夜は、私も迷惑を掛けたみたいだし」
「……ああ、うん……。……じゃあ……お願い……」
ウルズと一緒に歩く道のりで。
フレイアは言った。
「楽しかったわ。また一緒に飲みたいわね」
「……そうだね、その時には付き合うよ。ただ……」
「ん?」
「飲まれない程度に、ならね」
ウルズは、力なくそう答えたのだった。
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category: モンハン小説
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